花岡隆×余宮隆インタビュー第2話
花岡隆さんと余宮隆さんの作者インタビュー第2話をお送りいたします。
修行時代から現在に至るまで、ものづくりと向き合い続ける話。
どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。
第1話・・・音楽の余韻のようなものを求めたい(11/11公開)
第2話・・・自分の歌は自分で歌おう(11/18公開)
師匠のにおい
花田:余宮さんのこと、
最初に教えてくれたの花岡さんなんですよ。(以下花田 -)
花岡:そういやそうだね。どこかで見たとき、
今の若い人たち、こぎれいなものは作るんだけど、
余宮さんの焼き物、なんかそういうのとは違って、グッと目に入ってきた。
余宮:まだまだ迷っていますけど。
花岡:生涯迷うよ。
でもね、好きなことをしているんだから幸せだよ。
ところで、余宮さんも弟子入りから始まったわけでしょ。
中里さんなんて特にそうかもしれないけど、
どうあがいたって消えない師匠の影ってあるよね。
余宮:あります、あります。
-:特にお二人の師匠、濃いですもんね。The 独特じゃないですか。
花岡:うん、雑誌で見ているだけでも、
あ、これ番浦一門の仕事だな、ってすぐ分かる。
-:いまもそのにおいは自分にも感じますか。
花岡:うん、それは生涯抜けないものなんだと思う。
別に敢えて、抜こうとも思わない。
うちに若い人が弟子入りを希望してくると、
いい先生につきなさいって言うんだ。
うちに来たくて来るなら、うちに来てもいい。
或いはほんとにこの人に付きたいって思えるような人につきなさいと。
一生の仕事のベースをそこで左右することになるから。
-:余宮さんが中里さんの門を叩いたきっかけは。
余宮:田中丸コレクションで一気にひきつけられてしまって、
唐津焼がしたいって思っていたんです。
でも、なぜだか唐津焼を焼かない人のところへ行ってしまった(笑)。
というのも、中里さん、今は唐津焼のほうが多いのですが、
当時は粉引や南蛮焼がメインで唐津焼は少なかったんですよ。
今思えば、それがよかった。
僕、全然いま唐津焼いていないですからね(笑)。
こちらは天草の余宮さんの工房。
良い粘土囲まれた環境で、日々作陶されています。
感性が生み出す質感
花岡:私は自分で体動かして、自分で作ることを大事にしていきたい。
余宮:僕もずっと自分で作っていたいです。
-:さっきも余宮さんと話していたんですが、
花岡さんのものって他の作家のものに混ざっていても、すぐ花岡さんのだって分かる。
決して突飛な形や奇をてらっているわけではないのに。
これ、凄いことですよね。
余宮:シンプルだけど、かなり主張はするんですね。
花岡:僕は基本的には自分の手をかけたものしか外には出さない。
少しは手伝ってもらうにせよ、自分で作ることが大原則。
余宮:人に作らせるのはずるい(笑)。
花岡:魯山人のものも、彼が少しでも手を下したものはちがう。
図面書いてこのまま作って下さいってやっても、それは違うし、
見本渡してこれ作っといてって、そういうわけでもない。
また、そういうことまで、弟子やアシスタントにやってもうと、
彼ら自身も、それまでになっちゃうじゃないですか。
自分で作り出すことが出来なくなる。
自分の歌は自分で歌わなきゃ。
-:なんかすごく、花岡さんらしい言い方ですね。
コピーである以上、オリジナルを越えることは無いけど、
それがオマージュなのか、コピーなのか、大きな違いで。
焼き物に限らず表現者にとってこの部分は必ずついてまわる。
花岡:コピーだとすれば、したほうもされたほうも、両方、得しない。
-:その人が持っている全体的な雰囲気までは自分のものにはなりませんからね。
花岡:例えば、石黒宗麿さんのよさってそういうところだと思う。
あのぽつぽつとした感じ。
あれ、他人が表面なぞるだけなら、なんでもなくなってしまう。
-:花岡さんも余宮さんも、そういった感性とか、
モノが持つ色気とかいったものを大切にされていると思います。
そして自分の中の焼き物以外の部分を丁寧に作り上げて、守っている。
感性を磨くことに非常に誠実だと思います。
花岡:だって、それが仕事だもん。
焼き物のことばかりやっていてはいけない。
いろんな物見ながら楽しんでいくべきだと思うよ。
余宮:あ、いまそんな感じです。
いろいろ見に行ったり食べに行ったり、そういうこと始めました。
そうすると作るものに反映されていくんです。
忙しすぎると、いいもの作っているかどうかすら、
わからなくなってしまうんですよ。
-:表現者の部分だし、お二人、自分の感性、美意識を築いていくことや、
志を守ることには神経使っている気がします。
自分ときっちり向き合って正直にやっていかなければいけないって
考えているだろうな、って思います。
余宮:ま、そんな格好よくもなくて、結局俺、自由がいいんですよ。
-:他人に決められるの、嫌なんだ(笑)。
余宮:質感が大事だなって、思うんです。
よく焼き物で言う質感―焼きがいいとか悪いとか、
焼き物の表面の仕上がりとか―じゃなくて、もっと全体的な意味なんですが、
音楽でも本でも、自分の好きな質感て、ありますよね、
やきものでもそういう質感を表現できるといいなって思っているんです。
花岡:価値観というか、美意識というか、そういうものを大事にしたい?
余宮:その時その時で、自分にとっての”今の質感”ていうのがあるんです。
質感というのはどんなものにもある。
飲食店のサービスにも質感はあるし、そういうところからも刺激を受ける。
そういう自分の中での質感というのは、仕事にも出てくるものだと思います。
花岡:100人いれば、100の粉引きがある。
その人のものになっていればいい。あなた、
この中にいるの?って疑問に思うようなものはいけない。
-:自分から発しているものがないと。
産地じゃ嫌われ者
花岡:ところで僕は独立するとき、仕事場を産地に構えるのはやめようと思った。
不便だけどそういうところからは離れていようかなって。
それにね・・・僕、産地なんかにいたら、めちゃくちゃ嫌われそうだもん。
一同:大笑い
花岡:けんか売って歩いているわけじゃないんだけどね。
-:花岡さんは独特だから・・・余宮さんのいる天草は土の産地ではあるけど、
いわゆる陶芸の産地ではないですよね。
余宮:産地ではないです。開放的で自由な場所ですよ。
花岡:粘土と向き合えるってのはいいよね。
余宮:いい土、いっぱいあるから。
11月に向けて
-:よろしくお願いします、11月。今日はDM用のうつわも選びたいんです。
花岡:持ってくるから、ちょっと待っていて。
-:おーっ、格好いい楕円ですね、これ。これでいきましょう。
さて、11月に向けて、お二人からメッセージをお願いします。
花岡:えぇ、私でよかったら。
-:そういう言い方、しないでくださいよ(笑)。
花岡:この仕事は、その気になれば一生続けていけるもの。
自分のペースというか、この人はこういう風にやっていくんだ、っていうのが、
仕事から見えてこないといけないと思う。
今回はそういうものをお互い見てもらうことができたらいいね。
ま、あまりお互いを意識せずに自分のペースで仕事をしたいと思っています。
-:是非、それでお願いしたいです。
花岡:それでも、余宮さんとやるっていうのは
俺にとってはプレッシャーだよ(笑)。
余宮:胸を借りるつもりで・・・
-:二人でそんなこと言いあって・・・
お二人とも、本当にそんなこと思っているんですか(笑)。
花岡:作っているものもぜんぜん違うしね。年齢も親子くらい違うし。
-:ほんと、楽しみです。
余宮:僕らは花岡さんを見て育ってきた世代なので。
その影響を受けた我々が、どんな焼きものを焼いているか、見てもらいたいです。
花岡さんらの流れを僕らがどう吸収して、我々なりに表現しようとしているのか。
花岡:松井さんもこの二人の組み合わせ、難しいんじゃない。
-:お二人、今日まで面識はほとんどなかったそうですが、
僕は以前からお二人それぞれからお互いに対する思いを聞いていましたし。
で、考え方とか大事にしていることが、
話していても似ているところがすごくあるなっていうのを感じていて、
いつかきっと一緒にやってもらいたいっていうのは、
ずっと考えていたことで・・・
自宅の食卓に二人のうつわが並んでいても、すごくピンと来るんですよ。
花岡:ほんと、二人展のように人と一緒というのは、企画展を除いたら、本当に久しぶり。
黒田(泰三)さん以来じゃないかな。
余宮:あ、そうですか。
花岡:多分嫌がられているんだよ、相手に、大体ね。
「花岡とはやりたくない」とか言って。
-:今日は多いですね、「嫌われてる宣言」(笑)。
一同:大笑い
-:感性と感性のぶつかり合いですね。二人展というより、
個展の同時開催というイメージで考えています。
並んでいる姿が楽しみです。
花岡:いつも通りの仕事を見てもらいたいと思う。
定番もね。と言っても、僕、そんなに定番ないけど。
-:いやいや、花岡さん、定番多いほうですよ。
余宮:僕には花岡さんが作るもの全部定番に見えますけど(笑)。
-:それは凄いことですね、ある意味。
花岡:人気者の余宮さんのものが欲しいって、来る人、多いんじゃない。
余宮:いえいえ、そんなことないです。花岡さんの足ひっぱらないようにしないと。
-:さっきから、お互いにそんなこと言い合っていますね。
花岡:まあ、僕たちらしく楽しくやりましょう。
余宮:はい、宜しくお願いします!
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