お客さま 多田ファミリー
(多田光博さん、昌子さん、多田康雄さん、麻希さん)×花田店主 松井英輔
子どもの世界をめぐる Let’s connect the dots
第1話・・・「食育は体の栄養、木育は心の栄養」10/19更新
第2話・・・「おもちゃは、楽しむための生活道具」10/20更新
with 東京おもちゃ美術館館長 多田千尋氏
第3話・・・「林さんのうつわに、みんなが微笑む理由」10/21更新
with うつわ作家 林京子さんご夫妻
第4話・・・「明るい気持ちになるうつわ」10/22更新
with うつわ作家 村田菜穂美さん
第5話・・・「食べる力は、生きる力」10/22更新
with 編集者 萩原朋子さん(家の光編集部)と中綾子さん(ちゃぐりん編集部)
With お客さま 多田ファミリー(多田光博さん、昌子さん、多田康雄さん、麻希さん)
2014年より本格的に子どものうつわ作りを始めた花田の新シリーズ「MOAS Kids モアスキッズ」
1周年を迎え、さまざまな取り組みから子どもたちと接する皆さんとのトーク企画を実現しました。
子どもをとりまく、日々の食卓、遊びの場、学びの機会・・・いろいろな話題を通して感じた
心温まるやさしい気持ち、明るく楽しい気持ち、考えたこと、未来への前向きな気持ち・・・
それら皆さんとの交流を、シリーズでお届けいたします。
一緒に会話を楽しむような気分で、お読み頂けたら幸いです。
ご紹介
多田光博さんと奥様の昌子さん
光博さんの弟さん、康雄さんと奥様の麻希さんは
それぞれお子さんも交えて、いつも仲の良い明るいご家族です。
光博さんのご来店をきっかけに、家族ぐるみでお越し頂くようになり
昨年の「MOAS Kids モアスキッズ」発表の展示会でも、おもちゃで遊んだり
うつわを選んだり、賑やかな時間を過ごしていただきました。
食卓を通して想う家族のこと、思い出、これから・・・
笑い声に満ちた楽しいトークが繰り広げられました。
子どもの世界をめぐる Let’s connect the dots
第6話・・・「僕らに合った食のかたち」with・・・お客さま 多田ファミリー(多田光博さん、昌子さん、多田康雄さん、麻希さん)
多田光博さんと奥様の昌子さん |
光博さんの弟さん、 |
子ども時代のごはんの風景
花田:花田には多田ファミリー、皆さんでよく来て下さいます。
子どもたちは仲いいし、
ケンカもするし、仲直りもするし・・・健全ですね。(以下花田 -)
光博: 花田さんには弟の家族とよくお邪魔していますが、実は姉もいて、
そこも2人子どもがいるんです。普段は、その3家族で集まって、
皆でご飯食べたり、
お茶会やったり。集まると、大騒ぎです。
麻希:大騒ぎ・・・すごいっす・・・(笑)
光博:うちの場合、実家がお寺ですから、そこがホームになっているんです。
-:お寺で生まれ育った多田兄弟。子どものころの、食事の時間の思い出なんて、ありますか。
光博:僕ら兄弟は食事中しゃべると怒られたんです。
それが教育の一環かどうかも分からないまま、子どもながらにこういうのが食事の時間なんだなって
思っていました。そもそも父は別の部屋―居間でテレビ見て、お酒飲みながら
食事していたんですよ。
-:お父さん一緒じゃなかったんですね。
康雄:はい。朝食は一緒でしたが、昼は皆バラバラ、夜は父1人と家族残りの4人
という組み合わせでした。
光博:父がまず晩酌を始めていますが、僕らの食事は7時くらいから始まる。
テレビ見てようが、何をしてようが「ごはんできたわよー」で瞬間的に集合。
そして、食べ終わらないと、他のことをしてはいけない。
父の場所から僕らのことは見えないはずなんですが、僕らの声が聞こえてくると、
叱られていました。
康雄:お坊さんは、修行中は勿論、基本的に私語厳禁なんです。
その流れで「食事は早く、失礼が無い様に残さず」が原則でした。
父親は別に「だまれっ!」みたいな雷親父だったわけではなく(笑)、
職業柄そういうことになっていたんだと思います。
光博:いわゆる典型的な楽しい食卓風景ではなかったと思います。
それが逆に作用して、食事も違う楽しみ方があるんじゃないかって、
僕らは自然に考えるようになったのかもしれません。
それで、現在のように、うつわに気を使ったり、
皆でわいわいやったり、っていうことに行き着いている気がします。
-:それぞれ家庭のカラーがあるんですね。
家庭の食卓での雰囲気や会話って子どもの人格に大きく影響を与えると思います。
お医者さんの家だと、お医者さんの仕事の話が主になるかもしれないし、
銀行マンの家ではそれに関する話題になることが多いのではないでしょうか。
直接的に仕事の話をしていないとしても、物事を見たり考えたりする視点は
それに近いものになりますでしょうし。
変わっていくとしても、それがスタートラインになる。
多分、みんな違うんですよね。話しを聞くって言うことは、その目線を手に入れることにもなるわけで・・
光博:食卓での言葉も子どもの価値観に大きく影響を与えると思います。
そういえば、昔に意味も分からずに言わされた言葉ってありませんか?
いまはその価値がわかる、みたいな。うちも、食事の掛け声あったよね?
康雄:あった、あった。
光博:いただきます、の時に「一粒の米にも万人のちからが加わっています。
一滴の水にも天地の恵みがこもっています。ありがたくいただきましょう。
いただきます。」って、みんなで言ってから食べたんです。
康雄:仏教では食事をジキジって呼ぶんです。そして、食事作法(ジキジ作法)っていう
一般向けの作法があるんですが、それを小さい頃からやっていました。
光博:麻希ちゃんもずっと、お寺の家庭なんだよね。
麻希:聞いたことはあって、知ってはいたけど、私の実家ではやっていなかった。
実践するかどうかは家ごとに違うと思います。
主人のところ、厳しかったんだなあって感じます。
うちは、テレビも見ていたし。それなので最初主人から、家で食事作法やってるって聞いて
びっくりしましたよ。
康雄:僕たちは小さいときから・・・朝勤行、夜勤行と、本堂に行って本尊さまに手を合わせてからでないと食事をさせてもらえませんでした。
麻希:おそらく、一般家庭のお父さんだと朝食、一緒か別かで食べたあと、すぐに出勤されますよね。
ただ、住職の場合は基本、家が職場なので、私は小さい時もずっと父親が家にいたり、
今は主人がいたり。常に食卓に父親がいるっていう環境なんですよ。
よく考えると普通のことではないですよね。
康雄:出勤が無いものですから(笑)。
-:昌子さんのご実家は?
昌子:寿司屋でした。
-:逆に、お寿司屋さんのおうちだと、夜一緒にご飯食べることって無いですよね。
昌子:はい、家族でご飯を食べるのは、定休日の月曜だけでした。
祖父が怖い感じだったので、晩酌を始めたら、祖父が見ている番組を皆で黙って見る。
あまり会話もせず、ひたすら祖父の話を拝聴。「ハイ」、「ハイ」っていう。
-:反論など論外。
昌子:週一回の家族の食事がそれ(笑)。それ以外の日はわたしと祖父が一緒に食べていました。
でも、祖父が早めに晩酌を始めていて、お酒が進んじゃっていると、私はお店で食事をしていました。
お店は近かったので。で、お客さんと話しながら食事をするのも楽しくて。
そしてたまに「おまえちょっと握れよ。お前が握ると安くなるんだろ」とか常連さんに言われて。
「子供料金だろ」とか言い出す(笑)。
光博:昌子のところは、日ごろから外向けの食事環境というか、お客さんにお出しする用の
食事やうつわが身近にあるなかで育ってきたんだと思います。
昌子:盛り付けは、母親にはうるさく言われていました。
こういううつわに対してはこういうふうにしな、って。
高く盛りなさいとか、重ねて盛りなさいとか、色合いや飾り付けも考えなさい、と・・・
光博:うつわを選ぶときもそういう観点が中心なんですよ。
一緒に選んでいて、これ欲しい、買おうよっていうと、
「ダメこれ、ああだからこうで使いづらい」とか具体的な理由を挙げて断られちゃうんですね。
-:典型的な買い物のやり取りですね。
光博:そうなんですよ。僕は物欲と所有欲のみ(笑)。
昌子:それにあなたは、色が偏るのよ、気が付いたら、全部茶色、みたいな。
遠い日への感謝
-:でも、普通にそういう風に考える習慣ができているっていうのはお母様からのメッセージですね。
親からのメッセージ、大きくなってから気付いたり理解したりすることも多いです。
光博:僕の場合はさっきの、感謝の言葉ですかね。
いまようやく分かってきた。そして、今でも頭の中で繰り返されます。
仕事で、農業の生産者の方たちを取材することがあるんですが、そういう時には覚えている言葉の一つ一つを思い出します。作っていらっしゃる方々の仕事振りや気持ちを思うと、やっぱり食べ物大事にしなければいけないんだな、一粒ひと粒のお米を大切にしなければいけないんだな、ってそのたびに思います。
-:僧侶の立場から見て、康雄さんの考える「食べる」ことの基本的なあり方というのは
どういうものなのですか。
康雄:先代が良く言っていたのは、檀家仏飯(ダンカブッパン)ということです。
村の人たちがお寺に色々持ってきて下さいますが、それは、仏さまに持ってきているんだよ、と。
檀家さんは、あなたたちに米や野菜を持ってきているわけではない。
仏さまに上がったものが下がって、僕たちが食べているんだからね、と。
-:自分たちで獲得したものはではなく、与えられたものであると。
康雄:はい。父はそのあたり、厳しく言っていたので。
今でも30年以上、一週間に一回野菜を持ってきて下さる方もいるし、米がとれれば
30キロ袋毎お寺に下さる方もいる。お寺にそういうことをして下さる方って、いまだに沢山いるんです。
そういう方々に、うちが貧しい時代にもちゃんと食べさせていただいていたんで、
子どもたちにも厳しくて、残すと強く叱られていました。
当時の僕たちにはそういう理解が無かったので、ただ怒られているような気分でしたが、今やっと理解ができるというか、同じこと言っていますね、息子たちにも。
光博:出されたものは残さずきれいに食べなければいけないという強迫観念みたいなものが働いて、
今でも、残さない。太ってしかたがないですね(笑)。
-:えー、ほんとですか。食べたいだけじゃないですか、光博さんの場合(笑)。
光博:ははは、そうかもしれない。
昌子:ほんと、びっくりするくらい食べるんですよ。
光博:お腹いっぱいだなあ、って思いながら食べてるよ。まだこんなに残ってるけど、
全部食べなきゃなあって。
麻希:えーっ、そんなこと思いながら食べてたの、今まで?
光博:あー、いやいや、ウチでのハナシよ。
麻希:食べていただいていたのね。有難うございました (笑) 。
僕らの時代に合った食のかたち
-:お子さんたちも残さない習慣が付いているんじゃないですか。
康雄:いやあ、残しますね、残念ながら。そうはうまくいきませんわ(笑)。
そういえば、話変わるけど、親父がさ、わさびが出てくると必ず「わさびはきれいなとこ
ろでしかできない」って言っていたの覚えてる?
光博:(大笑)言ってた、言ってた。
麻希:それ、おばあちゃん(お義母さん)の口癖じゃないの?
康雄:違うよ、あれは先代の影響。ずっと言っていたね。わさびなんかが出てくると、
あーまた言うんだろうなって思いながら、聞いていたの覚えています。
-:何か、その先のメッセージがあるんですか。教訓のような?
康雄:どうなんですかね、無いと思いますよ。昔、わさびが育っているところにでも行って印象に残ってるってだけじゃないですかね。
麻希:二人は言わないね、でも・・・
康雄:僕は言わないよ(笑)
光博:言ってもオチが無いからね(笑)
麻希:そうそう、わさびで思い出したんですが、こちらの母は一緒に住んでいるんですけど、
出すと必ず喜んでくれるんですよ。「わー」って。「わー、刺身だー」って。
作ったものを全部褒めてくれる。
-:いいですね。
麻希:褒められたほうがうれしいですよね。主人たちは何も言わないけど(笑)。
昌子:それにお義母さん、「この間の煮魚、美味しかった」なんて言って、
作ったものをちゃんと覚えていてくれるんですよね。
麻希:そうそう!何にも言わないで食べられるよりかは・・・
康雄:(笑)何も言わないで、ってことはないよ。
麻希:「ウマイ」とかは、一回くらい言ってくれていますけど・・・
康雄:いやね、僕、ものすごい早食いなんですよ。
子どもが食べていようがなんだろうが、さっさと食べて自分で食器まとめて持っていっちゃうので。
もう、体に修行中の習慣が染み付いていて・・・
とにかく、修行中は先生より早く食べないといけないんですよ。
毎食10分は掛かるか掛からないか、くらい。
光博:みんなでごちそうさま、ないの?
康雄:ないよ。
麻希:そういうこともあるから、個々に配らないで、大皿にしているの。
皆で取り分けるのが好きだし、いつまでもつまめるようにしておけば、
いつまでも食卓にいてくれるかなって。
康雄:悪い癖だなって自分でも思ってはいるんだけどね。
麻希:会話していればいいじゃん。
康雄:会話がないのも染み付いてる(笑)。
子どもにとっても楽しい食事は幸せ。
麻希:黙って食べるよさもありますけどね。でも、私は、ワイワイガヤガヤ派だな。
康雄:私たちの宗派で寺子屋みたいなことをやっていて、子どもたちを集めたお泊り会があるんですね。
その時、朝と昼は基本的にしゃべらないんですよ。
私たちの世界では一日二食がルールで、本来夜は食べません。
備え付けである朝と昼は行としてご飯を食べるので、その間はしゃべったり、音を立てたりしないというわけです。
麻希:でも夕飯の時はしゃべるよね。
康雄:その寺子屋でも、夕飯は、足も崩していい。ワイワイ食べましょう、ということをするんです。
どちらかというと、我が家もフリーですけど、癖で朝と昼は早いんです。
-:自分が子どもの時と、今の子どもたち、違いを感じることありますか。
康雄:とても食が豊かなので、彩りや料理そのものが華やかですよね。
お母さんたちも子どもの弁当一つとっても、頑張っている。子どものためと思いながらも、同時に親同士の競り合いも感じる(笑)。
麻希:ないない(笑)。単なる自己満足だよ。
康雄:今の子どもたちはそういうものを目で楽しんだり、食べて楽しんだりしている。
私たちの親の年代から見たら、なおさら豊かに見えるのではないでしょうか。
花田さんの食器でご飯食べていたら、ほんと幸せに育つなって思いますもの。
光博:以前は、食べられるだけで幸せだったけど、いまは溢れているから、選べるし、
子どもたちがリクエストさえできる時代です。
あれ食べたいって言えば、いまの親は作ってくれますよね。
豊かだからこそです。
昌子:今って子どもに食べたいものを聞きますね、言われてみれば。
光博 僕らの時代は「出されたものを黙って食べなさい」でしたものね。
-:食べたいものを聞いてくれたのは、せいぜい誕生日のときくらいですよね、僕たち。
康雄:考えさせるために、聞いているんだよね。
麻希:そう、自分で選ぶことも大事かなって。黙って出されたもの美味しく食べられることも大事だし・・・どっちも必要だね。
光博:自分で選んだものだから残さない、っていうのはあるよね。
昌子:残すこともいやだもの。
自分が選んだものを楽しくキレイに食べようって言う気持ちを持ってもらうために聞いている。
あと、子どもの友達が来たときなんかは、チーズを星のかたちにしてあげるだけでも、
子ども同士がそれについて話しているんですよね。
旗を立てたり、好きそうなものをかたどってあげたり・・・
子どもにとっても楽しい食事は幸せなんです。
光博:あの時の食事楽しかった、みたいなこと報告してくれるものね。
楽しかったこと、覚えているんだよ。
昌子:覚えてくれているんだって、こっちも楽しくなったり、うれしくなったりする。
ただ、子どもの目線を持ちつつも、子どもに合わせすぎちゃってもいけないなって思う。
光博:自分たちが生きていたときと同じことは出来ないって感じているから、
僕らの家庭も今の時代に合った食のかたちを探しているような気がします。
康雄:我が家みたいに、末っ子が家を継いで、それでも姉や兄の家族がしょっちゅう、
寺に遊びに来て、ワイワイガヤガヤする環境っていうのはとてもいいな、って思います。
今は普通、難しいですよね、そういうの。
-:定期的に集まっているんですか。
康雄:えぇ、頻繁に(笑)
麻希:大体私が声かけるんですけど、そうすると、すごい来るんですよ。
一同 (大笑)
麻希:みんな近くに住んでいて、車や電車ですぐに来れちゃうから、その日の夕方4時に声かけても集まっちゃう(笑)
光博:暇なんですよ(笑)。
麻希:人が沢山訪れる家っていいと思います。
康雄:寺は子どもにとっても楽しい場所なんですよ。境内もあって、遊び場もあるから。
そういう意味では、環境にも恵まれていて、接待がしやすい。
家族親戚集まっても、子どもは子どもで遊ぶので、それはとても助かる。
別の場所では大人はああでもない、こうでもない、って始まるものね。
とてもいい環境なのかなって。
麻希:今だけですよね、こういう毎日を送ることができるのは。小学校までかな。
みんなが来ると家が揺れていますから(笑)
康雄:息子たちが姉の子を慕っていたり、いとこ同士の社会が出来ている。
麻希:義姉の下の子は、いつも家ではお姉ちゃんがいる弟くんなんだけど、
お寺にくればもう、年下もいるし、兄貴分になる。
-:立場が人を作るんですね。
光博:そしてうちの娘たちは、さらにその下。みんなから可愛がってもらってます。
人にもまれて、人は育ちますものね。それぞれが我慢もするし、
ケンカもするし、殴り合いもする。
そうして大きくなっていくんですね。
昌子:いい経験をさせてもらっています。で、いとこ同士って兄弟間とはまた違うんですよね。
-:いとこ同士で遊ぶのって本当、楽しいですよね。帰りたがらないし。
麻希:で、結局泊まっていく(笑)
-:で、両親は帰っていくんですか?
光博:親も泊まるとき、結構あります(笑)
麻希:みんな、本当によく食べてくれるんですよ。
光博:美味しいんだもん。
昌子:そう、美味しいの。
麻希:特に美味しいわけじゃないと思うよ。みんないて楽しいからじゃない?
昌子:種類がすごいんですよ。ちゃんと年代も考えられていて。それぞれにあわせられて作られている。
おばあちゃんが好きなもの、大人が食べたいもの、子どもが喜ぶものっていう風に。
麻希:世代順にいくと、魚、肉、炭水化物(笑)。分かりやすいでしょ。
-:はっきりしていますね。でも本質かも。
光博:がっちり、みんなの胃袋を掴んで離さないという(笑)
麻希:花田さんで買ったうつわでね。
光博:花田さんのうつわ、寺の総代会(檀家の地区代表が集まる会)でも使っていて、
喜ばれているようですよ。
麻希:褒められて。これいいな、って。
光博:あの河上さんのグラスもね。
康雄:そうそう、あれで日本酒出すんですけど、村のおじいちゃん、ご機嫌で日本酒飲んでる。
こんなグラスで飲んだら贅沢だなーとか言いながら。
麻希:格好いいし、持ちやすいし。って。
-:うつわも愛情表現のひとつだと思います。
康雄:ほんと大切です。お客さんが来る環境にずっといるんで、お茶碗、湯呑、
どれ一つとっても、気を使って用意しています。
麻希:それで、うつわをそろえまして、ちゃんと飾り手もいるんですね。
昌子:ははは(笑)
光博 昌子は実家が新潟でお寿司屋さんをやっていただけあって、流石に盛り付けはうまい。
新潟のお義父さんもいい日本酒を送ってくれるし。役割分担しっかりですね。
昌子:お客さんに料理を出すのが好きなんですよ。
-:DNAですかね。誰かの為に料理を作って、きれいに出して喜んでもらうことを自分の幸せにできる。
麻希:この間買った季更器窯の織部の四方皿も大活躍です。お刺身、よく合いますよ。
光博:それに、白磁の楕円皿を醤油皿で使ったり、とかね。
そうそう、この二人、毎年記録とって、反省会までしているんですよ。
ノートにもうつわと料理の盛り付けやらがイラスト入りでズラリと記録してある。
昌子:来年はお刺身すこし減らそうか、とかね。
麻希:お皿は今度これ使おうか、とか。
光博:残り物いつもチェックしてるよね?
麻希:そうだよ。食べられないで、残っているものは知っておかないと。
-:取り組み方が前向きですね。
昌子:年末年始の総代会でお出しするお料理は、10月くらいから、どうしていこうか考えはじめますから。
麻希:みんながウチ来るの好きだって知っているから(笑)。
準備だとか言って、年末年始は一週間くらい泊まっていくんですよ。
食卓はにぎやかだから、台所ってひとりだとさびしいんですよ。
それなので、台所でいつも女同士、しゃべりながらなんやかんややっていると、楽しい。
帰られた後ってポカーンとしちゃって、さびしい。
昌子:得意分野もそれぞれだよね。揚げ物が得意だったり、私は逆に揚げ物は不得意なんですよ。
私は魚系かな。麻希ちゃんは洋食もいけるんで、私は和食系かな。
大切にする気持ちのめばえ
光博:うちの娘、村田さんのご飯茶碗は大のお気に入り。あの赤巻きのね。
昌子:そうそう、大好きです。あれ、内側に動物が描かれていますよね。
例えば、おやつを盛り付けると、動物がおやつをほおばっているように見えるんですよ。
-:おやつ!
昌子:動物がアイスクリームやらおやつやらを狙っているように見えるんですよ。
それで面白がって食べたりとかね。
康雄:うちは元々プラスチックのプレートだったんですけど、
陶器に変えて、割れるってことと、重さを自分で運んで知ることが出来た。
割れることを知ってもらうために。
割れたらおしまいだから、モノを大事にする、ということになる。
-:僕らも同じようなことを考えていて、落とすから割れないものを用意しよう、ではなくて、落とすと割れる、ということを知ることでものを大事にするんじゃないかなと。
落としても割れないと思うから投げるし、乱暴にも扱う。
そもそも、好きなものなら大事にしてくれるのかなあ、って思うんです。
昌子:うちの娘、好きなうつわをさわろうとすると怒るんですよ。
あと、お友達にいいかなあ、と思って赤巻きの茶碗とかいちごの楕円皿を出しちゃうと、嫌な顔する。
願うこと
-:お子さんたちの将来について思うことありますか?
康雄:(しばらく考えて)本心を言うとわたしは、どちらにかは寺をやって欲しいなって思っています。
継ぐ、継がないを決めることもあるんですけど、その前に継がなくてはいけない、っていう自分を取り巻く環境について、子どもながらに思い知らされる日が来ると思うので、それを自分なりにうまく乗り越えていって欲しいなって思います。
結果や結論はどうであれ。いずれにしても、やりたい者がやらないと他人に法なんて説けない。
-:「仕事なんで、説かせていただきます」じゃあ説得力ないですよね。
康雄:はい、もし息子たちがそうなったら、絶対に得度(とくど)の許可なんて出さないし、やればいいんでしょ、みたいなこと言ったらその時点で、息子でもやらせないと思います。
なので、そういう感じに自然にやりたいなっていう意思表示が出てきたらいいなって思う。
なるべく押し付けないように、芽を出してもらうように。
自分がちゃんとやっていれば、見ていてくれるかなって。そんな風に思っています。
いずれ、頭丸めて、学校でいじめられたり、指差されるときが来るんですよ。
麻希:私は、上の息子がもうすぐ小学生になるのでイジメは普通に心配。
加害者にも被害者にもならないで欲しいなって。わたしたちが育ったときと状況が違うのは明らかですから。親側にも問題ありそうな気もしますけど。いたって普通に育っていって欲しい。
光博:そういう意味じゃあ、ニュートラルになって欲しい。
傑出した才能もいらないし、逆もあれですけど、普通に人を思いやることができて、
自分のこともちゃんとできる、まっとうな人になってもらえればそれで十分です。
昌子:私も同じ。ひとつは、なんでも、ありがとうって言える子にしたいと思う。
ありがとうって言えるってことは周りをちゃんと見ていられる、ってことだから。
わたしも、今思うといじめられていたのかなあ、っていう時期があって。
でもそのときちょっと冷静になって周りを見てみると、手を差し伸べてくれる人がいる。
なにかしらに感謝できている子であれば、救いの手は差し伸べられる。
食事も一緒かな。野菜なんか元々作ってくれている農家の人への感謝の気持ちも忘れないで欲しい。
わたしがそういう商売の家に生まれたってこともあるかもしれませんが。
そういう気持ちは自分の子どもにも伝えていってもらいたいですね。
おもちゃの広場で剣玉の名人技を披露して下さった康雄さん。
下の画像はジュニアの2人が夢中で遊んでいる姿です。
遊ぶときは大人も子どもも一緒。
楽しい集中力の中で興じる姿がとても健やかに感じました。
パパの技を超えるのは難しそうだけど、頑張って背中を追ってね!
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インタビュー一覧
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