古賀雄二郎インタビュー


─:古賀さんはいつ頃からうつわづくりの道へ?

古賀:友達の父親が陶芸家だったんです。その友人宅へしょっちゅう遊びに行っているうちに興味持ち始めて・・・で、その勢いで大学も途中でやめてしまい、20歳で瀬戸の訓練校に入って、25歳の時、独立。

─:もともと、ものを作るのは好きだったんですか?

古賀:ええ、なぜか、立体のものが特に。

─:なるほど。平面以外(笑)。

古賀:プラモデルを作ったり、大工さんの仕事を見たりするのが子供の頃から大好きでした。勉強は嫌いだったけど、図工と体育だけは成績良かった(笑)。

─:確か、古賀さんは小学生の頃、イギリスにいましたよね。

古賀:小学4年から6年かな。ロンドンから車で1時間くらいの郊外に住んでいました。当時はサッカーばかりしていましたよ。

─:日本人学校ありました?

古賀:無いので、現地学校に行っていました。

─:言語も分からず、大変だったのでは?

古賀:いや、それが苦労したっていう記憶が全くないですよね。3ヶ月くらいしたら、慣れてきていたような記憶がある。勉強した覚えもないな。今思えば、子供は学習が早いよね。僕の場合、友達ができて、ワイワイやっているうちに、覚えていけました。

─:ところで、今のこの工房の場所を選んだのは?

古賀:瀬戸からは岐阜のほうで独立する人が多いのですが、僕は海の近くが好きだったので。

─:家は自分で作ったんですよね。

古賀:そうそう、最初来た時はただの山だった。全部切り開いて。井戸も掘った。最初は瀬戸にいながら半年位かけて基本的な部分を完成させていきました。木を感じられる家に住みたかったんです。

─:確かに、木を感じられる家です。最終完成までには1~2年?

古賀:いや、最近やっと完成(笑)。そんなに必須でない部分はついつい後回しにしていたり、気が変わってしまって作り直したり。庭もちょいちょい変えているんですよ。あの山桜も、僕がここへ着た頃は咲かなかったけど、最近は季節になるときれいに咲くようになってきた。そういう変化は見ていると楽しい。

─:もともと、地元は?

古賀:生まれたのは横浜だけど、すぐ神奈川の伊勢原に移って、そのあと、関西へ。で、イギリスですけど、結局今の作手が一番長い。父親の仕事が色々な場所へ行く仕事だったので、小さい頃は転々としていました。

─:色々な場所で生活されているんですね。

─:古賀さんのうつわに「―くささ」というものを感じないのはその辺りなのかもしれません。肩肘張っていないし、変なこだわりもない。お洒落なうつわだけど、「私はお洒落です」って顔はしていない(笑)。ところで、古賀さんは粉引、刷毛目、灰釉のものなどが主ですが、どうやってこのスタイルに至ったのですか?

古賀:特に意識もしていないんだけど、自分に合えばなんでもいいかなって。しっくりくるものが、意外とすぐ見つかった。ただ、漠然と「使えるもの」を作りたいな、とは思っていました。質感や材料の質には神経使っています。

─:かたちは?

古賀:シンプルで自然なもの。頭だけで考えすぎないようにして。

─:古賀さんといえば登り窯。いつ頃からですか?

古賀:10年以上前の話になりますが、一番最初はすごく大きなものを作ったんです。今使っているのは4基目。ほら、あそこの作りかけのが5基目ですよ。近々完成予定です。

─:自分で色々改造できるからな、古賀さんは。

古賀:電気窯用の電気は完全に切ったから、これからは薪だけですよ。

─:電気切った?

古賀:そう産業用のね。完全に薪にしようと思って。そうなると小回りの利く、あまり大きくない窯も必要だから、今それを作っている。最初に作ったのは実に大きくて・・・一人で仕事しているでしょう。年に3回焚ければいいかな、って感じでした。

─:なんでも自分で調達。

古賀:薪も、釉薬も自分で用意しています。釉薬は去年の稲刈りの時に藁を分けてもらって、あの窯で。いいのが沢山できた。土だけは常滑、信楽あたりで。

─:人から買うのは土だけか。

古賀:他人に頼むと微妙に違うんですよ、自分のイメージと。イメージを言葉で伝えるのって難しい。自分の中でもイメージでしかないから、言葉に置き換えようとして苦労するより、自分で作ってしまおう、と。

─:でも、知識や技術がないと無理でしょう。特に家なんて、作ろうと思って作れるものじゃない。

古賀:まあね。工事現場行って、職人の人たちの仕事も小さいころから見ていたし。と言っても、そんなに注意深く見てたわけじゃないけど。

─:それだけ?

古賀:ええ。大体、基本になる部分というのは分かるじゃないですか。

─:そんなものですかね(笑)。ところで、これからの展望は?夢は?

古賀:今までの仕事の路線を追求していきたいです。値段もあまり上げずにね。常に、自分で買おうって思える値段じゃないと

─:さて、5月の企画展。古賀さんの出品は片口、ぐい呑に冷酒クーラーですが、古賀さんにとって「自分のために作るうつわ」とは?

古賀:自分で使いたい器かな?

─:ということは、お酒飲みたいと。

古賀:そうそう、そんなところ(笑)。あと、僕の工房は人がよく遊びに来るからその人達も楽しく飲めるようにね。

─:もてなしたいうつわ、か。いいですね、この家でああでもない、こうでもないって色々話しながら飲むの楽しそう。

古賀:うん。しかも、ここならどんなに騒いでも苦情が来ない。

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