【お知らせ】
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浄法寺塗を代表する塗師であり、シーズンには漆掻きも自ら行う岩舘隆さん。
「原料から完成品までを生み出せるという地の利を活かしながら、
新しい浄法寺塗を再興していくんだ」と、岩舘さんが塗師の道を歩み始めた当初から、
一貫してきた作り手としての想い。
それが全工程国産漆使用の羽反椀という形になって姿を現しました。
岩舘さんの代表作と言えば端反椀。
通常は上塗りの仕上げに、国産漆の最高峰と言われる浄法寺漆を使用します。
それが出来るのも、漆の産地ならではの特権なのですが
更に全工程、下塗り、中塗りから全て、浄法寺漆を使うという
贅沢極まる夢のような汁椀が、羽反椀(国産漆)です。
華やかな蒔絵が脚光を浴びていた時代に、
漆の良さを活かすため無地の汁椀を黙々と作り続けた岩舘さん。
その結果、漆だけで重ね塗りをするという、漆産地ならではの特色を活かした技法を編み出します。
岩舘さんは自ら漆掻きもします。
6月中旬頃から漆掻きのシーズンがはじまると
週に何度か早朝から漆林に入る、忙しい日々が続きます。
「親父が漆掻きをやっていたけど、直接手取り足取り教わったことはないよ。
見よう見まねで始めたからね、我流なんだよ。他のみんなの方がずっと上手いよ」
と仰る岩舘さん。
更に漆はご自身の工房で精製し、一年分の漆を調達しています。
漆掻きのシーズンが終われば、今度はお正月用の塗りの仕事が大忙し。
このサイクルで何十年と仕事をし続け
苗木から育てた漆の木は10年から15年をかけて成長し、最後の一年で漆を採取します。
その1本の漆から採取できる漆は僅か牛乳瓶1本分程。
その貴重な漆を汁椀の塗りに使えるのは、産地ならではの強みなのです。
「塗りたて」という技法で仕上げる浄法寺塗りは
最後研がずに塗って終わることで、
塗りたてのふんわりと柔らかな光沢と、優しい手触りが残ります。
持って、洗って、拭いてを繰り返し
使うほどに艶を増し、堅牢になり、美しく育つ浄法寺塗り。
浄法寺漆器が「作り手8割、残りの2割は使い手が完成させる」と言われる所以がそこにあります。
同じ国産漆で上塗りをするので、さすがの岩舘さんも出来上がった後は見分けがつきません。
そこで高台に「浄●」と印を付けています。
この●が全工程国産漆使用の印です。
言われなければわからない本当の目印。岩舘さんらしいマークです。
溜塗は、着色しない漆そのものの色。
何度も塗り重ねることで、深い艶のある光沢を作り出しています。
使い込むことで、このふんわりとした艶は透明感を増し
美しい色琥珀色へと変化していきます。
浄法寺漆を「故郷の宝」と誇り思う人の点と点が繋がり
ひとつの環になって、漆を守り続けています。
それは、漆林の手入れを続ける人々、
技術を次世代へ伝承する漆掻き、
木地師、塗師の方々、そしてそれを使う人々です。
価格:12,650円(税込)