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胡椒が好きすぎて
花田:内山さんは、そもそも胡椒の愛好者です。それも相当(笑)。(以下花田-)
内山翔平:地元のラーメン屋さんのネギラーメンがきっかけです。
そのネギラーメン、コショウがメチャクチャかかっているんですよ。
最初は辛く感じましたが、知らないうちにはまっていってしまって、そこから何にでも胡椒を掛けるようになりました。(以下内山)
-:何にでも…。
内山:牛乳にかけたらスープみたいになりました。
納豆にはオリーブオイルと共に。
バニラアイスにもいいし、チョコレートにもいい。
たまにはビールにも。
基本的に乳製品、発酵食品、肉は鉄板です。
もう、カルボナーラに至っては胡椒を食べるために作るようなものです(笑)。
あと、スープなど、食べた後に底に胡椒がこずんでいる風景も好きなんです。
-:胡椒にオススメはありますか。
内山:今はKURATA PEPPERさんの完熟胡椒がオススメです。
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-:ペッパーミルを自分で作るまでになってしまった。
内山:最初は海外の古物を中心に買い集めていました。
消費地のフランスか産地の東南アジアのものが多いのですが、一方で、木製のペッパーミルの選択肢が少ないことに気が付きました。
それなら、自分で作ろうと。
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始まりはファンレター
-:中の刃物はどうされているのですか。
内山:「挽く」機能は中の刃物でほぼ決まります。
そこを作ることは出来ませんので、IKEDAさん(ペッパーミル製造会社) の刃物を使わせていただいています。
国産のものを使いたいという思いもありました。
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-:刃物だけよく入手させてもらえましたね。
内山:IKEDAさんのペッパーミルは愛用していて、ペッパーミルを作ろうと思ったとき、制作したペッパーミルの写真を添えて、IKEDAさんにファンレターを書いたんです。
そうしたら親切にもお返事をいただいて、刃だけ特別に卸してくれることになりました。
感謝しかありません。
-:ミル刃は胡椒挽きの心臓部とも言えます。
内山:刃の機能としては切れ味と頑丈さが求められますが、僕は「気持ちよさ」も大事だと思っています。
IKEDAさんの刃は「ジョリジョリきもちよく」挽ける感じです。
「砕く」とか「潰す」とかってというより「切る」感じなんです。
挽いた後のコショウの見た目も違いますし、香りの立ち方もよりフワっとしている気がします。
KURATA PEPPER倉田ペッパーさんの胡椒は粒が大きめなのですが、それとも相性がいいんです。
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ペッパーミルのかたち
-:ペッパーミルを作る上で、かたちはどのように決めていくのですか。
内山:とにかく作りたいものを作った感じですが、好きだったウインザーチェアの足や座卓の足、こけしなどを参考にしています。
-:そういうところからヒントを得ているのですね。
驚きです。
胡椒が好きすぎて、棒状のものを見ると、どれも胡椒挽きに見えるのかもしれませんが(笑)。
内山:それもあります(笑)。
好きなように作った後は妻の意見を聞きます。
僕は放っておくと、どんどん作りが太くなっていってしまうようなので、そのことはよく言われます。
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-:内山さんは何か胡椒挽きの理想像のようなものをお持ちなのですか。
内山:そこを突き詰めることはできない気がしています。
始めてみてわかったのですが、人によって胡椒挽きに求めること、違うんですよね。
見た目、握り心地、重さ、材質、質感、高さ(食卓用は低め、調理中心は高め)…。
意外だったのは容量を気にされる方が多いということです。
携帯用を希望される方もいらっしゃいました。
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愛着を持てるようなスキ
-:使う材料はどのように選ばれるのですか。
内山:今は柔らかすぎない木を選んでいて、広葉樹でも硬めのものを使います。
メープル、桜、ブラックウオールナット、栗など現在は約20種類。
ペッパーミルだとどんな木でもいけますし、小径木でも使えるのがいいです。
最近は地元の林業の方々との付き合いもできてきたので、できれば、地元の木を使っていきたいです。
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-:まだまだ進化していきそうですね、内山さんのペッパーミル。
内山:この間、たまたまお客さま所有の作り始めた頃のミルを見たんです。
上手くはないんですが、愛らしいんです。
ハッとしました。
「上手くなっちゃったんだね」と妻に言われました。
愛嬌、愛着を持てるようなスキも大事ですね。
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いいことしかない
-:ペッパーミルを始めて2年が経ちました。
内山:「作ってみたい」と思ったときに、すぐに始めてよかったです。
うまくいかないことも多いですが、楽しいです。
能天気に聞こえるかもしれませんが、ペッパーミルを始めてからというもの、いいことしかない。
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-:「○○したい」と思うことは誰にでも沢山あります。
実際始めてしまうことが素晴らしいと思います。
内山:最初の頃は「こんなの誰が買うんだろう」って思いながら作っていました。
胡椒が好きで始めたので「これで食べていけるようになりたい」とか「人気者になりたい」とか思っていなかったのが良かったのかもしれませんね。
最近は「いいところに目を付けたね」って言われますけど、そんなつもりでもありませんでした。
まあ「いいところ」じゃなかったとしても続けていくつもりです。
胡椒がある限り…(笑)。
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