吉岡将弐 染付展
新古伊万里が謳う
8月26日(水曜日)からウェブ上で 吉岡将弐 染付展「新古伊万里が謳う」が開かれます。
実は 前回の新作展示会を 終えた直後から 骨董店を巡ったり 資料を調べたりしながら
“これはなかなか面白い!”、” 洒落ている!” 現代のうつわとして 甦らせたらどうか!”等と思われる参考品を求めたり 選んだりしていました。
そのようにして蒐めた古器を含む 様々な資料 20点ばかりを吉岡さんのもとへ既に送り届けてあるのです。
それだけでなく吉岡さんの熱心なファンの方から 是非ご自身の持っていらっしゃる古伊万里を本歌にして模しを作ってほしいというリクエストも頂いています。
いつもなら工房に伺って 試作品を手にあれやこれや打ち合わせをしますが
今年はままならず電話でのやり取りに終始しました。
そこで今年は今回出品される25点の中から注目の3点を取り上げ
作る上での苦労話を含めて 私の感想も織り交ぜながら紹介させて頂くことにいたします。
作者、一番のお気に入り
「染付 椿文皿」
吉岡さんに今回の20点の新作のなかで一番のお気に入りはどれですかと伺いました。
「椿文皿です。」と即座の返答です。
和洋中の料理を選ばないいかにも使い勝手の良さそうな7寸皿…。
リズミカルな雲文つなぎ文様を淵に配し 穏やかな円で囲まれた見込みには
達者な筆で伸び伸びとしかも愛らしく椿の花枝文が描かれています。
吉岡さんは 正確無比な線描きを皇室専用のうつわ作りで有名な妙泉陶房で会得し
自由闊達な挿絵と現代的なセンスを九谷青窯で磨き上げました。
対照的なスキルやセンスを二つの窯元で鍛えた作者にはこの皿はその技をともに十二分に活かせると思ったのでしょう。
お客さまとの改まった席でも また普段の寛いだ家族や仲間の食卓でも
「大活躍間違いなし!」のうつわです。
今に生かす江戸初期文様
「染付 杉菜文6寸皿」
広い野原にバランス良く点在する
杉菜の草むろ 奥行、広がりのあるスケールの大きな立体感のあるお皿です。
この古伊万里の本歌が江戸初期の制作というのですからそんな時代に
よくぞ これほどまでに洗練された文様が生まれたものだと感心してしまいます。
吉岡さんの手に掛かると切れ味の良い見事な『今様のうつわ』として甦ります。
さあ 皆さまはどんな料理にお使いになられますか。
和食ですか、 洋食ですか、 デザート皿にも素敵ですね。
“うたげ”の花形
「染付 牡丹文皿」
昔 白洲宅にちょくちょくお邪魔していた頃のことです。
酒宴もたけなわの頃になってくると当夜のメインが供されます。
そんな時に使われるうつわの一つがこの古伊万里「染付 牡丹文皿」でした。
咲き誇る二つの牡丹が7寸皿に所狭しと描かれた華やかさこの上ないものです。
どんな料理に合うのか 勿論 それは問いません。
このお皿ひとつでその場の雰囲気が一段と盛り上がります。
部屋の照明まで 今一つ明るさを増したようです。
吉岡さんは手を抜くことなく鍛え上げた筆遣いでひとつひとつのうつわに
自らの静かな感動を描き込んでいきます。
新たな気持ちで取り組んだ 出品作25点、お愉しみ下さい。