藤塚光男さんインタビュー2019


藤塚光男作者インタビュー

ザクロとポチャッとした蝶々

花田:それでは、今回の個展に出品予定のうつわについてお話を伺いたいと思います。
まずは、このザクロの小鉢です。(以下花田-)

藤塚光男作者インタビュー

藤塚:元々、初期伊万里で、この文様のお皿を見たんです。
一見、ザクロには見えないですよね。
かろうじて、この点々で分かるかな。

-:ザクロは、形がもう少しダイレクトに描かれているものが多いですものね。

藤塚:これ最初イチゴかなって思うくらい(笑)。
で、ちょっと太めのポチャッとした蝶々が、またいいでしょう。

-:「ポチャ」も、文様の構成もご覧になった初期伊万里と一緒ですか。

藤塚:「ポチャ」は一緒(笑)。輪線はとっていなかった気がします。

-:元々お皿だったものを、なぜ小鉢にしたのですか。

藤塚:元々は、これくらいの小鉢を作りたくて、絵付けする際に、以前見たこの文様を思い出しました。
まあ、元々はお皿の図案だから、鉢に落としてみて、合うかどうかは焼いてみないと分からないんだけどね。

-:鉢にするとなると深さが出ます。
絵付けの際、気にされることはありますか。

藤塚:全体のバランスです。
平面に描かれたものを深さのある鉢にする時は、落とし絵的に中央に集めるような構成にして、縁を線で締めるって感じでしょうか。

重ね輪文7寸皿

-:続いて重ね輪文7寸皿です。

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藤塚:元は、古伊万里。柴田コレクションです。

-:そうなのですね。

藤塚:線を取らずに、濃淡二種類の濃(だみ)だけで輪を描きました。
で、濃だけでは扁平になってしまうので掻き落としも加えました。

-:立体感が出てくるわけですね。

藤塚:動きも出てくるかなって。

-:重なり方も目を引きます。
薄いほうの呉須が少しにじんでいるのもいいですね。

藤塚光男作者インタビュー

藤塚:あぁ、これはねえ、たまたまなのよ(笑)。
面白いけど、次もいい具合ににじんでくれるとは限らないからね(笑)。

-:構図としては、丸を全て見込みに入れないことで、広がりが出ますね。

藤塚:そうですね。縁は口紅することで、引き締めています。

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一体、何の花なのか…

-:濃掻き落し花文角型皿は構成がとても洒落ていますね。
角皿で、市松をずらしつつ、花を掻き落とし…。

藤塚光男作者インタビュー

藤塚:韓国のポシャギがヒントになっています。

-:境目を横断して掻き落とされているのが、おおらかですね。

藤塚:元々、その絵をポシャギで見つけて面白かったから作ったんですよ。

-:市松ありきではなく、花文を気に入られたのですね。

藤塚:そうそう。「なんか面白いなあ」って思った記憶があります。

-:この花文様、あまり焼き物では見ない表現ですね。

藤塚:「これは何の花だろう」って色々考えていてね。
「チューリップかなあ」って…思わない?

-:ええまあ、言われてみれば。

藤塚:最初は桔梗かなと思ったんです。

-:花だけ見れば桔梗ですね。

藤塚:そう、花だけ見ればね。でも、葉っぱが違うでしょう。
だからこれ、チューリップじゃないかなと思って。

-:昔のもの見て、何の花だろうって考えるの楽しいですよね。

藤塚:面白いよね。それとね、お客さんに「なんの花ですか」って聞かれるのよ。
「いやあ、何なんでしょう」なんて、一緒に悩んだりして(笑)。
「もうそれ以上聞かんといて」って感じです(笑)。

-:市松の中心もずらしています。

藤塚:ポシャギの感じが出るでしょう。
で、布に近いように、平らなお皿にはめてみました。

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10年ぶりに

-:次は梅花文三つ葉型皿です。

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藤塚:10年以上作っていなかったのですが、久しぶりに作りました。
見本場で、ボーっと昔の仕事を見ていて「あ、そういえばこれ、長いことやっていないな、あらためて見てみると面白いな」と思って(笑)。

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-:このお皿は10年間見つけてもらうのを待っていたのですね。

藤塚:独立時から20年くらいずっと作っていたんですけどね。
なんで作らなくなったか分からないけど(笑)。
たまには僕の変形もいいでしょう?

-:色々あると楽しいですからね。皿にしても、鉢にしても。

藤塚:同じ口径でも、深かったり浅かったり、平があったり…同じ小皿という用途は一緒でも色々なかたちがあったり…、それによってバリエーションも色々あって、そのあたりも日本の食卓の豊かさだと思うしね。
で、白磁があって、染付があって、上絵があって、漆器があって、土物があるわけでしょ。
豊富ですよ、日本のうつわは。

-:昔のものを久しぶりに再開すると、当時を思い出すこともありませんか?

藤塚:…。いやあ、それはないね(笑)。
昔のことってね、そうそう覚えていないですよ。
今で精いっぱい(笑)。

七宝に草花輪花五寸皿

-:七宝に草花輪花五寸皿はいかがでしょうか。

藤塚:これも重ね輪文と一緒で、間(ま)が面白いなと思いました。

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-:これも元は古伊万里ですか?

藤塚:はい。元々は輪花ではなく正円でした。

-:こういう構図ってよくあるのでしょうか?丸半分七宝で埋まっているのは見ますけど。

藤塚:このパターンは珍しいと思います。だから目に留まったんだと思う。
で、七宝の上に草花が出てくるという発想も面白いよね。
それで、もともとあった輪花の皿に描くことにしました。

-:もともと、この輪花の形はあったのですね。
文様が違うと、同じ形とは思えません。
輪花にしたのはなぜですか。

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藤塚:うーん…、勘だね(笑)。
この輪花には、もともと古染付のよろけを描いていました。

個展に向けて

-:色々お話しいただき、有難うございました。
何か言い残されたことはありますか。

藤塚:いや、あんまり語るとボロが出るから、これくらいにしておきます(笑)。

-:それでは個展、楽しみにしています。
よろしくお願いします。

藤塚:こちらこそ。

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