厳冬の日々
林 京子・新作うつわ展を控えて
1年半毎に開かれる林京子さんの新作展、
今回は2月21日(水曜日)から始まります。
最後の窯出しと打ち合わせの為2月初めの週末、
石川県能美市の工房にご夫妻をお訪ねしました。
それにしても今年の大雪と寒さは尋常なものではありません。
長く北陸の地に住まうお二人にとっても
嘗て経験したことのない厳しさと述懐します。
差し迫る新作展に向けて最後の追い込みの日々ですが
轆轤を前にして冷たい粘土に手をつける時
さすがにひとつの覚悟を固めます。
手を温めるため轆轤横に置いてある”たらい”のお湯でさえ
瞬くうちに冷めてしまう始末です。
それだけではありません
轆轤の成形を終え乾燥の段階で凍結してしまい
使い物にならなくなることもあります。
またあまりの低温に
燃料ボンベ内の気圧がなかなか上昇せず火力が不足してしまいます。
挙句、焼成が儘ならないといった状況にもおちいります。
とにかく寄せては返す波のように到来する異常な寒波は
予測を越えた障害をもたらすのです。
人一倍うつわ作りの好きな林京子さんにして
なかなか気分が乗ってこないこともしばしばです。
でも前回の個展で
お客様と交わした約束もあります。
その為にもせっせと轆轤を回し絵筆を執って
新作作りに励んできました。
林さんが今回の新作で取り組んだのは
1940~1950年代のフランステキスタイル(布地)の
長閑で可憐な文様です。
花柄や小動物をモチーフにしたものが多く
穏やかで温かな雰囲気に溢れた林さんのうつわには”持ってこい”と
ご自身、文様集を手にした瞬間気に入ってしまいました。
お馴染みの日常のうつわマグカップ、スープカップ、飯碗、小皿、豆鉢等の他
今回初めて登場する両手鉢、とんすい、仕切り皿にも
明るくユーモラスにあしらわれています。
その中でもご自身特にお気に入りは
黄色果実文小皿・きのこ文仕切皿・三つたんぽぽ4寸小鉢等です。
他にも新作約200点の中に
是非見て頂きたい手にして頂きたい自信の作があります。
厳しい冬大雪に埋もれてしまいそうな工房の中から
心の籠もった温かさが伝わってくるような
林京子ワールドのうつわが続々生まれてきました。
その温かさで積もり積もった大雪も
きっと融かしてしまうに違いありません。
家族揃っての楽しい食事気の置けない仲間との和やかな集い
そのような”団欒のとき”こそ
大活躍のうつわです。