『響きあう ふたり展』を前にして
西納 三枝(染付)・山本 恭代(色絵)を訪ねる
染付、色絵の分野で絶大な人気を誇った正木春蔵氏の下、
愛弟子として長く修練を重ねたふたり。
独立して10年、
ともに各々の個性を活かした仕事ぶりで
独自の世界を拓いています。
7月12日から始まるふたり展に向けて
正に佳境に入っているふたりを訪ねました。
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霊峰 白山の麓見渡す限り緑一色の田園風景の一角に
西納三枝の工房はひっそりと佇んでいます。
毎日、毎日「古染付の祥瑞」を中心に黙々と絵筆を執る生活です。
天分に恵まれるのは勿論のこと忍耐力も必要とされることから
昨今、古染付や古伊万里の模しを始め細密な連続文様に取り組む
染付作者は少なくなってきました。
西納三枝はこの道一筋
古き良きものが放つ感動を自らが表す線描に込めて
ひたすら腕を揮います。
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殊に今回の展覧会に当たっては染付の色調を課題にしたと言います。
青の濃淡を明快にしてメリハリを利かすことで
表情を より豊かなものにしていきたいという思いからです。
工房に並べられた制作中の出品作を 見渡すと
今回は大作と言うよりも日々の食卓で
頻繁に使い込んでいきたくなるような重宝なうつわが目立ちます。
「鍛え上げてきた伝統の技を駆使して
今様の日常うつわを 作る」
西納三枝の目指すところはこの言葉に尽きるのです。
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一方山本恭代の工房は金沢市郊外にあります。
ところどころに畑の残る住宅街の中一軒家を仕事場にしています。
正木春蔵氏の作風を慕って
門を叩き 主に色絵を中心に研鑽を積んできました。
中国・明・清代の古赤絵を手本にする事で基本的な筆遣いを会得したのです。
大らかで明朗この上ない人柄もあって
思い切った色遣いこだわりのない文様で作られる斬新なうつわは
多くのお客様の注目を集めるところとなりました。
色絵作者に必要な条件として
色彩をコントロールするに足るパワーとスケールを備えるという事があります。
山本恭代はそれに相応しい力を十二分に持っているといえます。
最近の仕事ぶりを見ていると
中国、日本に視点を止めるだけでなく遠くペルシャやデルフトの文様等も
取り込んだ意欲的な展開が感じられます。
確かな技に裏打ちされた奔放で大胆なうつわは
私達の食卓に新しい風を呼び起こしてくれるでしょう。
今ふたりの工房では展覧会に向けて作られた
新作、力作の数々が今や遅しと出番を待っています。
着実に筆力を磨き上げてきた西納三枝。
愉しげに色絵を謳歌する山本恭代。
響きあうふたりのコラボレーションに期待は高まるのです。