工房を行く~阿部春弥 直前訪問記~



2013年1月初旬―
辺りがうっすらと雪で覆われる長野県上田市、阿部春哉さんの工房へ。
来週4月17日からの「阿部春弥×日下華子 二人展」に向けての新作見本が揃う、
阿部さんとの約束の日でした。
こちらはその新作を見るのを年明け前から待ち遠しくしていましたし、
阿部さんも昨年11月から3カ月かけて、新作準備をしてくれていて、
新年を窯焚きしながら迎えたそうです。

工房の周りは雪で覆われていました。 明るく迎えてくれた阿部春弥さん。

阿部さんの仕事部屋に入って行くと、150を超える見事な新作群が待っていました。
大きいものから小さいものまで、1~1.5寸刻みに揃う大らかな片口鉢、
凛とした雰囲気を供える輪花皿や輪花鉢、
バリエーションが広がり、楽しさも加わった陽刻や面取り、しのぎ、
絵がわりが目を引くフリーカップやマグカップ、
用途を考えるのが楽しくなりそうなカップや小付、
思わず微笑んでしまう小物類・・・

入れ子になる片口鉢。
今回の目玉です。
様々なバリエーションが
揃ったマグカップ。

持ち前の端正なフォルム、潤いのある質感、清潔感溢れる全体の雰囲気はそのままに、
新鮮な空気が十二分に漂っています。
予め預けておいた古伊万里の鉢、フランスのショコラカップやボトルのアンティークも
、 阿部さんらしい解釈、表現をもって、うまく活かしてくれました。
そのまま模したものもあれば、部分的にそのエキスを従来の仕事に加えたものもあります。

端整なうつわが揃います。 今回の展覧会用の新作を選びます。

ついつい苦労話めいたものを期待して、
「素晴らしいですね。時間かかったんじゃないですか」などと聞くと、
「えぇまあ。3カ月掛かりきりでした」と質問に合わせるように淡々と明るく返ってきました。
そう、これが、阿部さんの魅力です。
傍から見れば大変に見えることも、或いは苦労に感じることも、
本人にとってはあまりそうではない、少なくとも表にそういったものは出てこない。
打ちこんでいる仕事そのものが好きであればこそのスタンスです。
阿部さんの仕事への愛着や愛情をあらためて実感しました。

そして、どれも素晴らしい150種類の新作から約90種を、苦労しながら展覧会用に選びました。
数時間の間の、選びながらの会話からも、
今回の新作づくりに対する阿部さんの想いは伝わってきます。
今回預けていた骨董に対する見方、釉薬など製法の工夫、
白磁への想い、かたちを作りあげる上での試行錯誤・・・

ずらり並んだ徳利。 うつわの説明をする阿部さんは
真剣そのもの。

さて、阿部さんは、二十歳そこそこで独立して以来、今年でほぼ10年。
一つの節目を迎える頃でもあります。
阿部さんと花田の付き合いも独立初期の頃からで、仕事も様々な変遷を経てきました。
遠慮もせずに、非常に困難なリクエストを花田からしたこともありました。
ただ、どんなことでも、爽やかに素直に受け入れてきてくれたのが阿部さんです。
その都度、阿部さんと花田の付き合いも前に進んできたのだと思います。
始めから何か特定のものを目指していたわけでなく、
毎日使われるうつわをより良く作りたい一心で、
日々決して怠らず、努めてきたからこそ獲得できた魅惑や奥深さ。
今回は、阿部さんが本来持つ瑞々しい才気がそれらと相まって、見事な飛躍として結実しました。
この企画展で花咲くこと、間違いないでしょう。
ご期待下さい。

阿部春弥さんと日下華子さんは、企画展初日の17日(水)に来店予定です。


■企画展名
綺麗なうつわが、咲きました。―阿部春弥×日下華子 展―

■開催期間・場所
期間 : 2013年4月17日(水)~ 27日(土)  ※期間中無休
場所 : 「暮らしのうつわ 花田」 2Fギャラリースペース

■展示内容
盛皿、盛鉢、小皿、豆皿、取り皿、銘々皿、中皿、楕円皿
小鉢、取鉢、モーニングカップ&ソーサー、ティーカップ、マグカップ、フリーカップ
そば猪口、蓋物、他多数 新作130種類


■作者プロフィール
阿部春弥(磁器)

1982年生まれ
大きくのびやかに挽かれたろくろが、端正な白に柔らかさをもたらします。
柔らかな面取や小気味良いリズムの鎬にも益々磨きがかかり、新たなファンが急増中です。

日下華子(磁器)
1977年生まれ
小気味良く描かれたクローバーやつばめ文様など、愛らしい染付や色絵が人気。
中鉢、取皿類の大きさや深みの付け方など、使い勝手を思いやる女性らしい心配りが光ります。

阿部春弥さんのうつわ一覧はこちら

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