「12月1日から始まる “静けさ 満ちる”に出品する新作うつわが殆ど揃いました。
セレクションに来て下さい。」と、
イムさん夫妻から 連絡を頂いたのは11月初めの事でした。
せっかちな私は 今や遅しの気持ちで待っていたのですが、
夏ごろから11月中旬ごろには来ていただけるようにしますと言われていましたので、
考えてみればやはり約束通り着実にやって頂けたのだと、
今更ながらその誠実な人柄を 再認識することになったのです。
18日(日)、愛知県豊田市の工房へ向かう車中では
どんな新しいイムさんワールドが繰り広げられるのだろう、
また一段と深化した目の覚めるような領域に誘ってくれるのだろうかと、
期待と想像で胸は膨らむばかりです。
イムさんの工房。
完成間近のポットが並びます。
工房に到着すると、イムさん夫妻はいつものように
穏やかな笑顔で迎えてくれました。
この笑顔に、早朝しかも5時間を越える
自動車の長旅の疲れもいっぺんに消え去ります。
招じられるままに、見本の陳列されている二階の部屋に上がります。
15坪ほどの見本場は、所狭しとしかも整然と新作で埋めつくされています。
一点物の大作から寸法別に、鉢や皿、変形皿、マグカップ、ポット、飯碗、湯呑み、
焼酎カップ、徳利、盃、小皿、豆皿、抹茶碗、香合、香炉に至るまで、
このまま新作展会場になっても良いぐらい見やすく、量感に溢れています。
所狭しと並ぶ新作のうつわ。
一つひとつ表情が違うカップ。
一点一点、目を凝らして見ると、
どれもこれも目にしたこともないような目新しい文様や形状ばかり。
しかも今までとはひと手間もふた手間も掛けた労作揃い…。
新作展開催をこの12月に決めた2年前から、
イムさんは構想を練り、着々と準備を進めてくれていたのでしょう。
「今回は、今までにない文様や形を表わすことに一番注意したよ。
ただ形の目新しさだけでなく、心や気持ちの新鮮さが出れば良いのだけれど。」
イムさんの言葉はいつも控え目です。
新作選び。どれもこれも
魅力的なうつわばかりです。
ずらりと並ぶうつわは圧巻。
企画展が楽しみです。
言われる通り、長くイムさんのうつわを見てきた私にも、
今回の新作を手にし、じっくり見てみると深みというか、
今までにない手応えを感じるのです。
全神経を注力した新作選びは約3時間を要するものでした。
その中でも新作ワインカップは実に愉しい、特筆すべきものです。
ややサイズは大きめですが、
これでグイグイワインを豪快に飲んだらどんなに愉しかろうと、
想像を逞しくさせてくれます。
膨大な量のうつわ選びを終えて帰途に着いた私は、
イムサエムさんのこの2年間、入念に準備された充実の仕事ぶりを、
如何にして花田ギャラリーで見応えある展示にしていくかに腐心するのです。
■企画展名
イムサエム新作展 静けさ、満ちる
■開催期間・場所
期間 : 2012年12月1日(土)~ 9日(日) ※期間中無休
場所 : 「暮らしのうつわ 花田」 2Fギャラリースペース
■出品品目
小皿、小鉢、中鉢、楕円皿、楕円鉢、角皿、徳利、盃、盛皿、盛鉢、香炉、香合、他
■作者プロフィール
イム サエム
1949年 カンボジア(クメール)に生まれる
1974年 プノンペンのFaculty of Arts陶芸科卒業
1974年 研修生として来日
1974年~1980年 瀬戸市で陶芸を勉強する
1980年 独立
1987年 東京、千葉、大阪、奈良、富山、名古屋、鹿児島等各地で 作品展を開催する