林京子インタビュー


interview01

「うつわって本当に楽しい」 林京子


花田でも、絶大な人気を誇る林京子氏。
うつわづくりのよきパートナーでもあるご主人の宏初氏も交えながら、お話を伺いました。



花田: 2月の企画展はお疲れ様でした。

林 京子:有難うございました。盛況でしたね。

花田:花田にも、在庫はほとんど無くなってしまいました。

林 宏初: うれしいですね、ほんと。

林 京子:自分のうつわがどんな方たちに使ってもらっているのか、気になっていたんですが
あの2日間、花田にいることできてよかった。色々な方達と、お話しできたし。

花田: 個展に向けては花田からも沢山のお願いをしたし、実に多くの新作を作ってもらいました。

林 京子:色々作るのは楽しい。見本やアイデアは多ければ多いほうがいいんです、文様もフォルムも。

花田:今回も動物文様は圧倒的な支持でした。うさぎ、やぎ、鳥・・・動物のバリエーションも随分増えてきました(笑)。

林 京子:そうですね。

花田: 林さんの場合、作り手本人がうつわづくりを楽しんでいること、うつわからありありと感じられます(笑)。

林 京子:どうやって使ってくれるかな、って自由に想像しながら作る。それがたまらなく楽しい。
しかも、自分が想像していなかったような使い方をしてもらっている話を聞くと、いよいよわくわくしてきます。
普通に考えると使いにくいかなあと思うものも、人によってはうまく使ってくれちゃう(笑)

花田:使い手が新しい役割をうつわに与えてくれる。うつわの楽しい部分です。

林 宏初:そうそう、自分で作っているだけでなく、お客さんや花田の皆さんから聞いた話が大きなヒントにもなります。 そういう話を聞かなければ作っていないようなものも沢山ある。

花田:林さんは作りたいものが自分の中ではっきりしている一方で、そういう声に対して実に柔軟です。
スタイルを持っていながらも、そのスタイルにこだわらないですね。いい意味で素直。

林 京子:自分の思いつくものだけだと幅が限られちゃうから。
周りの声を聞いて更にまた自分のアイデアがその上に乗っかって、って。
アイデアや楽しさがどんどん積み重なっていく。他の人が作ったものもすごく参考になります。

林 宏初:中村久一さんのお皿もよかったな。愛用しています。

花田:へえ。林さんとは全然スタイル違うのに。どんなうつわを見ても林さん流の咀嚼のしかたがあるんでしょうね。

林 京子:自分の中にないものを見たり使ったりしていかないと、毎年同じ新作を作ることに。

林 宏初:そうなると、使うほうも作るほうもつらい(笑)。新しいものに色々取り組んでいかないとね。

花田:同じものをきっちり作り続ける人もいますが、林さんは逆ですね。
テンポよく新しいうつわが次々登場してきます。

林 京子:現在に至るまで、一体、何種類のうつわを作ってきたのかしら。
自分でも分からない(笑)。

花田:そう言えば、九谷青窯来る前は何やっていたのですか?(林さんは九谷青窯出身)

林 京子:横浜市の陶芸教室で助手やっていて、そのあと青窯へ。

花田:青窯は誰かの紹介ですか?

林 京子: 「青窯が人探してるみたいだけど、行ってみない?」って美大の先輩から声かけられたんです。
「じゃあ、お願いします」って。

花田: あっさり青窯入社(笑)。

林 京子:私、自分の進路決める時、なぜだか色々調べたり探したりしないんです。
陶芸教室の時も、大学教授の親戚がたまたまそこの所長もやっていて
「君、横浜は地元だよね、行ってみる?」と誘われて「はい、分かりました」って。

花田:青窯はどうでしたか?

林 京子:大学にいた時は勿論作ることを重視しながら研究していくんだけど、
実際使って楽しむってところまではいかない。
一方、青窯では技術ばかりを覚えるわけじゃなくて、それ以上に「食器」ってものを学んだ。
暮らしのうつわを作る、というのはどういうことか、をね。
秦さん(九谷青窯主宰)に怒られちゃうかもしれないけど、青窯行ってあそこのうつわを最初に見た時、
「こんな雑でいいんだ」って正直思いました(笑)。

花田: 意外と喜ぶかもしれません(笑)。

林 京子:でも、実はそれはいわゆる「雑」ではないの。
毎日使うためにはうつわに望まれることなんです。
それが轆轤のたわみだったり、文様の遊びだったり、
これは日本のうつわに本来あるもので日本人が大切にしてきた楽しみ方の大事な部分。

花田: 終着点が作ることではなくて、買ってもらって使ってもらうことである
青窯だからこそ、接することができた部分ですね。

林 京子:実際使うとなると、青窯みたいなもののほうが使い易いんです。
当時は、秦さんのお宅に食事をしによくお邪魔していました。
普通の家庭では普段はしていないけど、でもやろうと思えばできる、っていう
丁度よい具合の料理とうつわの使い方なんです。材料も身近なものだし。
でもね、美味しいし、何よりね、食卓が明らかに楽しいの。
豊かな食卓、っていうのはこういうものなんだ、
ということを実感として学ぶことができたと思います。
何かを身に付けるって言うのは、多分そういうことなのね。

林 宏初:黒鯛を鍋で食べさせてもらったこともあったよね。
そのあと自分でやったけど臭くて食えなかった(笑)。

花田:それにしても、すごく良いモデルが身近にあったわけです。

林 京子:今ベースになっているのはそれですし、秦さんがあの場所で何を我々に伝えようとしていたのか、
独立後によりはっきりと分かった気がします。

花田:そうか、それに今では西洋の要素が少しづつ取り込まれて現代版になっているのですね。

林 京子:マニュアルだけではなくて、実体験で身につけることができたから、
スタイルが変わってもそれはそれで適用されていくんです。
今は違うかもしれないけど、当時は青窯にいてジッとしていても何も学べない、という雰囲気があった。
技術にしても美意識にしても、自分から掴みに行かないと。
で、実践と失敗を繰り返しながら少しずつ色々な事が見えてきて、身につき始める。

花田: 九谷青窯の凄いところは懐の深さだと思います。
青窯から独立したって、みんな違うスタイルで活躍しています。
普通にできることではないですよ。水野さん、岡本さん、岡田さん・・・その他大勢(笑)。
青窯で学んだことがスキルだけでないことは、明らかです。ただ、みんな骨董が好きですね。
それがあるから、目前のスタイルに引きずられ過ぎることもないのかもしれません。

林 京子:そうですね。皆、古いものは好き。

花田:美大、陶芸教室、九谷青窯、そして独立。
徐々に林京子ワールドが形作られて来る話はとても興味深いです。
今後の展開も楽しみです。

林 京子:家庭でどうやってご飯食べたら美味しいのかな、
楽しいのかなって、うつわ作る時はそれで頭いっぱい(笑)。

花田:さて、五月の企画展。この濃(だみ)の石畳の楕円皿、いいですね。

林 京子: おかずを色々と。アスパラとかタラコとか。この濃がいいんです。

花田: 鉄釉の線が文様を引き締めていますね。すごくしまって見えます。

林 京子: 上絵をしなくても、鉄釉を使うと派手やかになるというか、彩りがぐっと豊かになります。

花田: 2色なのによっぽどカラフルに見える。
この7寸鉢も鉄の線が何とも言えない良さがあります。この文様は何かをモチーフにしていましたか?

林 京子:アールヌーボーだったかしら。

花田:このマグカップも毎日使いたくなります。
それぞれが、林ワールドを象徴するようなうつわですね。
林さんの「私のうつわ」以外のなにものでもありません。
ついつい見ていると微笑んでしまううつわです。

林 京子:うつわって、作るのも使うのも本当に楽しいわ。

花田:うつわを見ていれば、分かりますよ(笑)。5月の展覧会よろしくお願いします。

林 京子:こちらこそ。

林京子さんのうつわ一覧はこちら

ページトップへ