「描きたかった絵付け」 岡本修
石川県能美市に工房を構える岡本修氏。
この周辺には九谷青窯出身の作者が多く拠点を置きます。岡本さんもその一人。
会話にも、九谷時代の先輩後輩の話題がちらほら。
独立後も九谷のメンバー同士の強いつながりを感じます。
岡本氏は5月に向けてどのような作品を準備してくれているのでしょう。
花田:これ、岡田(直人)さんのうつわですよね?もらったのですか?
岡本:お金出して買ったんですよ。
花田:あらま(笑)。
この間のホームページでの特集、岡本さんもよかったし吉岡さんの評判も良かったです。
岡本:それはよかった。
花田:林さんなんてこの間の2月の個展で
250種類も新作のサンプル作ってくれて、150まで種類を絞るのが大変でした。
岡本:すさまじい創作意欲だなあ。
花田:九谷青窯OB、OGそれぞれ活躍中ですね。
さ、岡本さんですが、5月の「私のしごと、私のうつわ」展、いかがでしょう。
これフリーカップですか?コーヒー飲んでもいいし、
小付として使ってもいし、楽しい使い方出来るといいですね。
岡本:花田の鈴木店長から提案があったんです。
そば猪口にしてみたら?って。この大きさならお茶でも、お酒でも飲めますよ。
花田:うつわが機能を制限せずに、広がっていくと楽しいですね。
そば猪口を色々使ってみるというのも昔から好まれた楽しみ方ですし。
岡本:実は、5月の企画展に向けては用途を考えずに、絵付けから入っていったんですよ。
「私のうつわ」って言われて考えたのは「描きたい絵付け」。
実用性よりも、自分が描きたいものを思いっきり描いた感じです。
たとえばこのそば猪口には、英語で「背中にひとでがついていますよ」って書いてあるんです。
花田:いつも思うけど、銀彩の銀をここまでよく磨くなって感心します。
岡本:銀彩用サンドペーパーでね、磨くんです。
色絵と同時に焼くんですけど、焼いた直後は白くなってカサカサなんですよ。
花田: なるほど。で、使っていくうちに雰囲気も変わってきます。
岡本:使い続けていくうちに黒くなることも考えながら作ってるんですけどね。
花田:味が出てきてもそれなりに楽しいようにするわけですね。
岡本:そうです。だから使い込んでいただきたいですね。
花田: これはスプーンレストですか?
岡本:でしょうね。
今回はしたい絵付けが出発点なので作ってみたらスプーンレストになっちゃった、という感じです。
花田:そう、書きたかった絵なのですね。
岡本さんの絵付けはとても人気があるので、それはとても楽しみです。
岡本:スプーンおいてもいいしね、って作ったあとから用途がどんどん出てくるのも楽しいじゃないですか。
花田:最近、銀彩の種類も増えてきましたね。銀彩のきっかけはたしか・・・
岡本: 最初はね、天使のカップから始まったんですよ。
花田:そうでしたね、あれはまさしくブレイク。
岡本ワールドの起点というか象徴になっています。こういう絵が好きなのですか?
岡本:イコンを見ていて思ったんです、「これは魅力的だな」と。
バックは本来、金が多いんですけどね。
花田:将来の展開はなにか考えていますか?
岡本:これはこれで、やっていきたいし、でも食卓の定番品というのでしょうか。
毎日普通に使えるものも作っていきたいんです。
花田:なにかうつわ作りで大切にしていることありますか。
岡本: あまり、うまくなり過ぎたくはないんですよ。
花田:というか、力入れ過ぎたくない、という感じでしょうか。
岡本:可愛さに走りすぎないように気をつけようかな、と。
上手く言えないんですけど作り手として「可愛さ」に甘えたくない、
というか可愛さを最初から狙いたくないんです。
作った結果、「可愛く」なるならいいんですけどね。
最初はそのつもりなくても、だんだん他人に「可愛い」って言われ始めると、
どうも意識してそれを出そうとしてしまいがち。それをしたくないんです。
花田:狙った可愛さって飽きるのかもしれません。いつまでも意外性の面白さを保ちたいですよね。
岡本:少し足りないほうがいい。作り手が妙に力んで完全過ぎてしまうと
使う方が疲れるんじゃないかな、と思います。
花田:なるほど。不完全の完全?完全な不完全?そんなところでしょうか。
いずれにしても、九谷での経験は生きているのでしょう。
九谷青窯出身者はみんなそれぞれの持ち味を生かして活躍されています。
岡本さんはどれ位、青窯にいましたか?
岡本:20歳の時入ったから・・・、17年いましたよ。
花田:それで独立ですね。岡田さんあたりと一緒ですか?
岡本: 岡田さんのほうが半年位、早かった。
独立後はしばらく今後の方向性を模索していて、それで今のスタイルに至っています。
花田:岡本さんにとって花田ってどんな存在ですか?
岡本: 何作っても、見てくれるから。自分でちょっと変かな、
と思っても「面白い」って受け入れてくれる。
花田:花田にとっては異色の存在ですから。目立ちます。
岡本:もちろん普段使い、加えてお客様にはプレゼントにも使っていただきたいと思っています。
花田:使ってもらって、そこから始まるんですからね。
さっきの林さんしかり、岡本さんも本人が楽しんで作っていることが
ありありとうつわに表現されています。
岡本:そうそう。特に5月の展覧会に向けては自分のために思いっきり楽しめたと思います。