MOAS Kids1周年企画
子どもの世界をめぐる Let’s connect the dots
第1話・・・「食育は体の栄養、木育は心の栄養」10/19更新
第2話・・・「おもちゃは、楽しむための生活道具」10/20更新
with 東京おもちゃ美術館館長 多田千尋氏
第3話・・・「林さんのうつわに、みんなが微笑む理由」10/21更新
with うつわ作家 林京子さんご夫妻
第4話・・・「明るい気持ちになるうつわ」
with うつわ作家 村田菜穂美さん
2014年より本格的に子どものうつわ作りを始めた花田の新シリーズ「MOAS Kids モアスキッズ」
1周年を迎え、さまざまな取り組みから子どもたちと接する皆さんとのトーク企画を実現しました。
子どもをとりまく、日々の食卓、遊びの場、学びの機会・・・いろいろな話題を通して感じた
心温まるやさしい気持ち、明るく楽しい気持ち、考えたこと、未来への前向きな気持ち・・・
それら皆さんとの交流を、シリーズでお届けいたします。
一緒に会話を楽しむような気分で、お読み頂けたら幸いです。
ご紹介
パッと見た瞬間に、
明るく楽しい気分になれる村田菜穂美さんのうつわは
実は、大人の方々にとても人気があります。
それを知ったのは、昨年はじめて村田さんのうつわを展示したとき、
普通に自分用としてお求めになるお客様が多かったことからでした。
大人になっても好きな絵本を大事にする気持ち。
幼い頃好きだったクッキーは今でも好物・・・。
そんな気持ちを思い出すような、
あたたかさを感じる村田さんのうつわです。
MOAS Kids1周年企画
子どもの世界をめぐる Let’s connect the dots
第4話・・・「明るい気持ちになるうつわ」
with うつわ作家 村田菜穂美さん
やってみたい!
そう思ってはじめたこどものうつわ
花田: 村田さんの描く動物は、可愛くて親しみやすく、 明るい気分にしてくれます。(以下 花田-)
村田: 最初はウサギやクマでした。同年代のお友達に子供ができたことが きっかけです。最初は身近な人のために、作り始めたんです。
-: 今年5月の「手仕事の贈りもの」展に参加いただいた大河なぎささん(赤ちゃんの靴の作者の方)も、最初はお友達を喜ばせたいと思って作られたそうですが、それがすごく喜ばれて、今に至っているそうです。手仕事の場合は特に、作り手のそういったパーソナルな経験や思いというものは大切なものだし、影響の大きいものですよね。こういった仕事のいいところでもあります。
村田: 元々、学生の頃から立体のオブジェもやっていて、うつわ作りに関しては石黒宗麿さんの仕事に強い衝撃を受けました。昭和の子供茶碗、大量生産の瀬戸の印判のお茶碗だったんですけど、それも違う意味で衝撃でした。
-: ポイントポイントで、そういったモノとの出会い、あるんですね。
村田: (本を開いて)これです。なんか凄く衝撃的で。昭和の最初の頃のものですね。
-: これがきっかけだったんですね。
村田: お茶碗一個でこんな気持ちを動かされる・・・いったい何なのだろうって。そういうことが起こりうるというのが凄いなと思って。そういうものが出来ればいいな、と思ったのが始まりです。
-: 愛知県陶磁資料館ですね。
村田: 瀬戸の作家さんで、子供茶碗をコレクションをしている小林一彦さんのモノだと思います。この本も随分古いですよ。
-: 1999年の本なのですね。
村田: 小林さんのカップ&ソーサーに童の転写のものがあって、それを地元で購入。この人のうつわいいなあと思っていたら、そういうご自身のコレクションも紹介していて。
-: 子供の頃って、動物だけど、擬人化されていたり、人の生活していたりするのを楽しく感じますよね。
村田: 一つのご飯茶碗の中の世界で、人の気持ちが動くっていうのが面白いなと思って。
-: それでやってみようと。
村田: 元々持っていた、やってみようという思いを後押ししてもらったっていう感じです。
-: 陶芸の仕事始めてしばらくしてからの話しですか?
村田: おそらく、13、4年前の話しです。そのころちょうど子供食器の展示会に参加させてもらいました。そこでご飯茶碗やランチプレートを発表して以来ずっと続けています。元々こういう絵柄を描いていたこともあって、進めやすかったです。あと、自分が子どものとき、祖母の家に、子ども用のご飯茶碗やお椀をそろえてくれていたんです。それが凄く記憶に残っていて、ほんとさっきのようなお茶碗みたいな感じで。それが凄くうれしかったのを覚えていて、今考えてみれば、やっぱりそういう記憶もつながっている気がします。
-: 僕も小さい頃はなにもうつわのことなんて、気にしていませんでした。でも、親って子どもが幼い頃使っていた食器、捨てないで取っておいてくれますよね。それで結構大きくなってから、それが出てくると、それが引き金になって、自分が幼少期に過ごしていた食卓周りの風景とか、食卓の時間記憶が舞い戻ってくるんですよね。その時、やっと色々なことに気が付く。
村田: 子どもの時は気付かないけど、大きくなって感謝しますよね。
-: 小さいときに何かを好きになる理由は、大人以上に子供は厳しいと思います。例えばうつわなら、人気作者の村田さんが描いたから、なんて理由で好きになりはしない。
村田: ものそのものですよね。
金継ぎの多いうつわ
-: ものやこととピュアに向き合う子供たちは大人以上に厳しくなりうるし、だませない。本当に好きになったら思い入れは大人が持つ以上に強いものなんじゃないかな、って思うんです。モアスキッズも子供に選んでもらおうとする。うつわだけじゃないけど、人間、自分で選んだことや決めたことは大事にします。お客さまの話なんですが、子供が自分でご飯茶碗を選んで、割れちゃったら、号泣。今まで、自主的に絵を描くような子じゃなかったのに、スケッチブックを出してきて、その茶碗のキツネの絵を描き始めたんですって。今まで描いてもいなかった絵ですよ。それだけ強く頭に残っていたんですね。普通、そんな風には思えないよね。号泣はできない。
村田: まあでも、好きなものが壊れたら、ショックはショック(笑)。お客様のお持ちのものが割れて、何回も作り直すことはあります。何回も同じものを送ったり、あと金継ぎしてくれたりね。わたしの価格帯だと、金継ぎしたら、新しく買うより高くついちゃうはずです。それでも金継ぎを選択する、っていう話をきくと、まさに作り手冥利につきるなって思います。「あるうつわ屋さんに私のうつわを持って行ったら、この人のうつわの金継ぎ依頼良く来るって言われた」ってお客様から聞いた時は、なんかうれしかったです。
-: 村田さんのうつわは、パーソナルな意味合いが強いのかもしれません。小さい頃から使っているものって、思い入れも格別でしょうから。
村田: ある男の子は、初めて3歳のときに買ってもらったご飯茶碗、今高校生になったのにまだ使っていくれているんですって。赤巻きの鉄絵のご飯茶碗です。お母さんから手紙もらってそれを知ることができました。
-: 小学校の先生と、卒業後に年賀状のやり取りするのに似ていますね。
村田: 年賀状で大きくなった写真見せてくれたり。
-: なんか成長を見守る存在ですね(笑)。男の子は意外とそういうところ繊細というか、デリケートかもしれません。作る際、子どもが使いやすいようにしている工夫は?
村田: 高台は広めにしています。引っ掛けて持ちやすいし、倒れづらい。
-: モチーフはどんどんでてきますか?最初に描いた絵は?
村田: これとか、これとか・・・。
-: あ、最初からこのなかよし4人組いたんですね。絵もこなれてきてる!動物はどうやって決まりましたか?
村田: 子どもが好きそうなものを選びました。
-: 最初に作ったもの、取っておかれているのですね。最初の頃から表情が変わってきているのも、またいいですね。
村田: ほら、こんなのもありましたよ。
-: なんていうか、頑張って描いてる感じですね。村田さんワールドの動物も随分成長したんだなあ。
村田: そうですね(笑)。だいぶ変わりました。
-: うさぎのスプーンレストが生まれたきっかけは、どんな感じでしたか。
村田: 子どもが見て楽しめるもので、小さいと口に入れてしまうのである程度のボリュームも考えて、座れる感じで置けたらいいなって。
-: 箸並べるのが最初のお手伝いですからね。子どもも欲しがるし、大人も欲しがる。よくこういう形考えられましたね。
村田: 作ったら、こんななったぁ、って感じです。
-: 並んでいると可愛いですよね。
村田: 重田(良古)くんが車や楽器で箸置き作っていたから、動物で作ってみようかなっていうのもあったかも。
-: そういうこともあったんですね(笑)。村田さんと話していると、使う人が明るい気持ちになれるように、色々考えてらっしゃること、伝わってきます。これからも、みんなが明るい気持ちになれるようなうつわ、たくさん作って下さい。今度のMOAS Kidsの展示会も宜しくお願いします。
村田: 宜しくお願いします。
工房内は、村田さんのうつわや置物がぎっしり!
ところどころに置かれている動物の置物は、まるで村田さんの相棒のようにも見えました。