ゴールデンウイークを控えた ある日 関越道、北陸道を使って
六時間を掛け 石川県の西納三枝、山本恭代お二人の工房を訪ねました。
当日は好天に恵まれ 道中 眼前に広がる山や川のパノラマは
眩しいばかりの新緑に覆われていました。
金沢市にある山本さんの工房に着いたのは昼前でした。
5月14日に始まる 初めての個展に向けて 今 正に正念場、
エネルギッシュな山本さんは持ち前のパワーを全開にして
ラストスパートといったところです。
師匠正木春蔵さん譲りの 遊びごころ 絵ごころを生かした作風に加えて
大胆で開放的な雰囲気が持ち味です。
とにかく明るい、そして楽しい・・・。
紫と緑のコントラスト 緑と青、黄の取り合わせ 赤一色、といった色の構成に
インド更紗 原始的なアフリカ文様 洒落た江戸文様が
意表をついて描かれます。
ケーキ、クッキーが似合う長角のお皿、オードブルに使ってみたい楕円皿、
宴の主役にもってこいの色絵楕円の大皿、
またマグカップ、 フリーカップなど小物類にしても
うつわ一つで テーブルはどんな表情に様変わりするのか
想像するだけで気持ちが高まってきます。
次は加賀市の西納三枝さんへ向かいます。
街中にある山本さんと違って
西納さんの工房は 田園の広がる農村地帯にあります。
工房に 一歩 足を踏み入れると 展示会への出番を待つ
所狭しと並べられた沢山のうつわが目に飛び込んできます。
「お見事! 準備は万全じゃないですか。」
「いやあ、こんなことでいいんでしょうか。」
謙虚な西納さんは どこまでも控えめです。
かつて 正木春蔵さんの工房を訪ねていくと
師匠が絵付けをしている傍らで
黙々と 同じように絵付け作業に没頭していた西納さんの姿を思い出します。
この間二十年 着実に絵付けの技を磨き上げてきたのです。
修業時代 西納さんが担当していたのは 正木さんの工房で 一つの柱であった染付け、
中でも中国明時代の「祥瑞窯」の写しです。
この技法は緻密な線描きが要求される一方で
全体には柔らかな雰囲気を表わさなければならないという 特異なものです。
今回の個展に向け この文様を使った 日常のうつわ作りは出来ないものかと 想を練ってきました。
現代の食卓にも淀みなく溶け込んでいくうつわを目指したのです。
ズラリと並べられた作品群を見ると なかなかどうして
初めての個展ということもあって当初抱いていた不安も払拭し
それぞれが 現代の個性的な祥瑞写しのうつわとして 見事に開花しています。
淵に鎖状に小ホールを施した洋風なトレー
改まった席に最適な祥瑞写しの中皿 八角小鉢
かわいい花文のマグカップや湯飲み
どれも 思わず手に取ってしまう魅力的な作品ばかりです。
コツコツと研鑽を重ね 筆力を鍛えてきた西納三枝さん
人柄そのままに大らかで楽しいうつわ作りの山本恭代さん
正反対の二つの個性が一堂に会する期待は高まります
翌朝 正木春蔵さんを訪問しました。
工房には今回の二人展に特別出品される一点ものが並べられていました。
いつもよりひと回りスケールの大きい、
どれも正木さんならではの 洒脱な作品ばかり・・・。
二人に花を添えてくださいます。
■企画展名
直前訪問記 正木春蔵 姉妹弟子 西納三枝 山本恭代展
■開催期間・場所
期間 : 2014年5月14日(水)~ 5月24日(土) ※期間中無休
場所 : 「暮らしのうつわ 花田」 2Fギャラリースペース
■参加作家
西納三枝、山本恭代、正木春蔵