花田:前田さんは、どのような学生時代を過ごされたのですか。(以下花田-)
前田:母方が代々棟梁だったこともあり、建築に進むつもりで、そういう高校に通っていましたが、予想と違いすぎる内容に面食らって3カ月で辞めてしまいました。
そのあと、実技中心の美術の学校に通ってもいましたが、自身の知識不足を痛感し、大学、大学院で哲学を勉強していました。
-:哲学はいかがでしたか。
前田:プラトンを専門にしていたのですが「知っていること」ではなく「知恵を求めること」こそが哲学であり「知りたい」という欲求こそが大切であることを学びました。
精神の鍛練にもなりました。
特に、院生は求められるレベルも高いので、自分の発表の時なんて風邪ひいて、寝込みたいくらい(笑)。
原文を英語、ドイツ語、ラテン語…色々な言語で読み込んでいかなければならないのは大変でした。
-:卒業後うつわの世界へ。
前田:研究者の道もあるにはあったのですが、陶芸教室に通っている兄がきっかけで、たまたまロクロをいじったら、それが面白くて「次、これやりたい!」ってなりました。
-:京都での修行をされていました。
前田:本当に多くのことを学ばせていただきました。
修業先を通じて、京都界隈のうつわ作家さんとも色々知り合うことができましたし、そういう方々からも、色々な技法を教えてもらいました。
今思えば、迷惑だっただろうなと思います(笑)。
-:(笑)。で、独立されます。
作りたいものの方向性は既にお持ちでしたか。
前田:イッチンは初期からやっていました。
-:模様のモチーフは、何かを参考にしているのでしょうか。
前田:オリエントのものなどは、模様の参考になります。
あと、古伊万里や古九谷、それに李朝の白磁も好きです。
-:うつわを作る上で大切にされていることはありますか。
前田:使いやすいことは勿論ですが、雑器に寄り過ぎて手で作っている意味がなくならないようにしています。
それと、美術館行ったり、映画見たり、散歩したり、友人と会話したり…手作りのものって作り手の色々なこととつながっている気がします。
そういうこともあって、毎日を大事に過ごしていたいなとは思います。
-:前田さんのうつわには華があります。
前田:料理を盛った時だけではなく、うつわ単体でもキレイなものを作っていたいので、華やかさは意識しています。
うつわって服と似ているところがあって、そのものが華やかだと、気持ちも華やかになりますよね。
-:今後、やってみたいことはありますか。
前田:絵付や耐熱のうつわなどもやりたいですし、オブジェにも挑戦したいです。
最近引っ越したのですが、新居の白い壁を見ていたら絵も描きたくなってきました(笑)。