花田:
それでは、今回の新作についてお話を聞かせてください。
まず、シェル8.5寸深皿とシェル小皿です。
フランスのアンティークを参考にしていただきました。(以下花田-)
稲村:本歌の持つエレガントさが好きです。
縁の飾りは少しすっきりさせました。
-:柔らかい感じがいいですね。
稲村:この凹凸が柔らかく出るように型も作りました。
あと、手元は外側に端反っていて、先にいくに従って縁が内側に向かっていくので、うまくそれを表現して、自然に貝殻っぽくなるようにしました。
-:色々使えそうです。
稲村:ミニトマトやブロッコリーの野菜もいいし、程よい深さがあるのでチャーハンやパエリアのご飯ものも合うと思います。
-:小皿も作って頂きました。
稲村:小さいバージョンがあったら、絶対可愛いなと思ったんです。
作ったら、すごくいい感じに仕上がりました。自画自賛ですね(笑)。
花田:食卓の中にあっても目を引きます。
稲村:手に収まる感じが可愛いなと思います。
カヌレなんかのお菓子をのせたいなと思いました。
-:次は、稲村さんオススメの猫小付です。
稲村:去年作ったびわ小付がヒントになっています。
古染付にも馬とか牛とか、色々な動物の向付がありますよね。
それなら、猫だっていいんじゃないかと思って。大きさは小さめにしました。
-:猫は描いていて楽しいですか。
稲村:飼っているので、モデルも近くにいますし、とても楽しいです。
猫はとにかく表情豊かで、バリエーションも豊富です。
-:これらの見本もそれぞれ表情が違いますものね。
稲村:「寝ているけど起きている顔」。
稲村:「悟り顔」。
稲村:「何かをしようとしているたくらみ顔」。
稲村:再び「悟り顔」です。
-:楽しいですね。
稲村:目元などの表情が角度を少し変えるだけでまったく違うものになります。
ちょっとしたことで、凄い悪い顔になったり、可愛くなったり(笑)。
あと、猫の体で直線は鼻しかないんです。
鼻だけ直線で、後は丸なんですけど、それがすごい好きなんです。
-:さすが、一緒に暮らしているだけありますね。
これは何に使いましょうか。
稲村:梅干し。
一応箸も置けるようにしたので、薬味も載せて、蕎麦やざるうどんの時にも使いたいです。
-:次はフルーツボウルです。
フランスのカフェオレボウルを参考にしていただきました。
稲村:「カフェオレボウル」という存在自体が可愛いです。
この、足が広がっている感じも好きです。
-:日本の焼き物の高台とも違いますし、雰囲気が出ますよね。
形を作る上で、気を使われたことはありますか。
稲村:この高台から上の丸みを活かそうと思いました。
ふっくらなりすぎず、直線的にもならないように。
-:程よい丸みです。
稲村:ふっくらさせてしまうと、和食器っぽくなりすぎてしまうので。
-:重い感じになってしまいます。
稲村:この軽やかさがいいですよね。
-:色々使えそうな大きさ、形です。
稲村:イチゴやサクランボがいっぱい入っていたら嬉しいです。
-:いいですね。
稲村:深さもあるので、小鉢としてリゾットなんかとも相性よさそうです。
-:続いて筒豆鉢です。
こちらはイギリスのものを見ていただきました。この釉調、いかがですか。
稲村:地の白さとか、少し黄色みのある白がきれいですよね。
この乳白に近づけるようにしました。
-:日本の白磁の白とはまた違う魅力ですね。
稲村:乳白で、青みが強くなりましたけど、多少は近づけたかなあと思います。
-:いつもの稲村さんの白とは違うので、新鮮です。
あと、このラフなんだかシャープなんだか分からない縁の落とし方の無造作な感じも僕は好きです。
稲村:そうですね(笑)。
この削ったシャープさが出たらいいなと思って。
釉薬も薄く掛けました。
-:サイズも小さくしていただきました。
稲村:このままでも可愛かったですけど、サイズを小さくしました。
ディップなどを入れてワンプレートのお皿にも置けるし、使いやすいかなと思って。
-:面白い使い方も見つかりそうですね。
玉子の黄身が一つ入るサイズです。
稲村:あとはチャンジャとか。
-:確かに。
唐辛子の赤は、この白に映えそうですね。
-:リム八寸皿の新作も作って頂きました。
稲村:最初に印判で縁を構成して、そのあと見込みにうまくはまりそうな鳥の文様を描きました。
-:印判の楽しさ、ってありますよね。
稲村:出来上がりもいいのですが、ハンコを押すこと自体も楽しいです。
-:押すのが楽しいのですね。
稲村:ポンポンポンっていう、はかどる感じのリズム感。
-:(笑)。
ところで、稲村さんご自身は8寸のお皿はよく使われますか。
稲村:よく使います。
我が家の食卓では7寸だと少し小さくて、窮屈な感じがするので、8寸だと丁度いいのです。
ほどよく余白もとれますし。
-:有難うございました。
展示会、よろしくお願いします。
稲村:よろしくお願いします。
皆さんにも、楽しんで見てもらえたら、うれしいです。