「山本 恭代 初個展」を前にして
ゴールデンウイークと重なるように 色絵の山本恭代さんにとっての
初個展が開催されます。
会期も間近に迫った4月中旬 片山津に打ち合わせのため伺いました。
色絵の達人 正木春蔵氏の下を離れ 金沢市郊外で独立して13年の時が経ちました。
昨年12月今まで集めてきた沢山の資料だけをまとめ車で30分程の片山津に運び出しました。
金沢市郊外の工房では従来通り成型、絵付け等制作に集中する傍ら
片山津の資料室では落ち着いて新作についての構想をあれこれ巡らして
いこうということです。
色絵とひと言でいっても様々な表情があります。
繊細な筆遣い 微妙な色調に表わされた細やかな優しい世界、
パワフルな筆致大胆な色遣いや構図によるスケールの大きな世界、
遊び心いっぱいの作者の個性が活かされた洒脱な世界
表わされている色絵の魅力はそれぞれ違ってもどれにも共通して言えることは華やかさで明るさです。
色絵の歴史を繙いていくと日本では江戸期の古万里、古九谷、琳派、中国では明代の嘉靖、万暦、天啓
ヨーロッパではマジョリカ、デルフトに行きつきます。
今まで山本さんはそれら古典のジャンルに拘ることなく心惹かれる色絵に出会うと
その「映し」をすることで筆運びや色遣いのセンスを磨いてきました。
スキルやセンスの基本として伝統に培われた揺ぎ無いものに学び
それを身につけていこうという実に正当な山本さんの姿勢です。
当初なかなか思い通りにならなかった筆致も修練の挙句徐々に狙い通りに筆が使えるようになってきたと成果のほどを振り返ります。
母として3人の子育てをしながらのものづくりの日々でしたがここへ来てやっと子供の手も離れ 本格的な色絵作者としての生活環境が整いつつあります。
山本さんは自身のこれからについて描いている夢があります。
古典に学ぶ経験を通して得た知識やセンスを十二分に活かしながら
現代の暮らしに溶け込んでいく使い勝手の良いうつわを作っていくことです。
そこには古九谷に見られる大胆さや力強さがあり
古伊万里が表わした見事な展開力があり
あるいは 京焼や琳派の持ち味である鮮やかな色遣いがあったりといった風で
色絵の楽しさが十分味わえるものにしたいと考えています。
ある時はキッチンに立つ主婦としての視点から日常の食卓は勿論のこと
改まった席でも十分に通用する場を盛り上げる存在感のあるうつわであってほしいと願うのです。
初個展で本格的な色絵作者として第一歩を踏み出す山本さん。
長く蓄えてきた成果を満を持す思いで披露する山本さんに大いなる期待を寄せるのです。