見たことのあるものなんて、ほとんど無い世界
花田: 世界を放浪中、城さんはアフリカドゴン族の泥染めに出会いました。(以下花田-)
城: 最初にドゴンの村で見たものは、バックグラウンドが茶色で、黒と白で絵を描いてあるものでした。
僕が選んだこれは、パターン化されていて、シンプルなほうです。
もっと派手でインパクトの強いもののほうが、あちらでは主流だと思います。
-: 最初の印象はいかがでしたか?
城: アフリカは見たことの無いものばかりで、見たことがあるものなんてほとんどない(笑)。
「インパクトずっと受け続ける」みたいな感じでしたが、泥染めもそのうちの一つです。
アジアだと、僕はよく現地人に間違えられるんですけど、アフリカでは一切そういうことがなかったですね(笑)。
意味が分からなくても感じるもの
-: 城さんにとって泥染めの魅力は何ですか。
城: チカラがある。
そして、アフリカの風土や人、空気に合っているんです。
日本で見ると、その感じがなかなか分からないかもしれません。
力強さ・・・、いやおおらかさかな。
模様などは意味が元々あるものだと思うのですが、宗教的な意味などは分かりません。
それらを分からなかったとしても・・・
-: ドゴン族を感じますか。
城: そういうことです。
そのものでもなければ、自分のものでもない(笑)
-: 泥染めが焼き物の仕事に繋がっていくことはすぐに感じましたか。
城: 旅行中は、そんなつもり、全くありませんでした。
焼き物でも、甕や壷など大らかで、雰囲気があるんです。
帰国直後はそういうものを模写していました。
ただ、全然・・・まあ・・・、僕自身そんな大らかじゃないんで(笑)。
性格は楽観的ですけど、日本人なのでモノはちょっと繊細になっていくというか、あの力強い大らかさは出てきません。
似ているけど、全然違うもの(笑)。
ほら、昔こんなのやっていたんですよ。
ハクション大魔王みたいな。
-: 面白い。そのまま写そうとした感じですね(笑)。
城: 「自分のモノではないな」と感じました。
-: 真似てみて、似てはいるけど、そのものでもなければ自分のモノでもない。
城: はい。 自分のモノに思えないので、自分寄りに作ってみたら、元の雰囲気は何も残っていないという・・・(笑)。
-: (笑)
城: それなら、アフリカのものをわざわざモチーフにする必要はないじゃないですか(笑)。
あの風土で、あの生活で、あの人間だから、ああいうものが成立しているわけです。
黄瀬戸が導いてくれたもの
城: そういうこともあって、しばらくそのことからは離れていたんです。
そうしたらあるとき、日本の黄瀬戸を見て、泥染めに近いものを感じた瞬間がありました。
-: 城さんが泥染めに感じていた部分に、黄瀬戸があらためて導いてくれたのですね。
城: あの空気感です。技術的には色味と肌合い、でしょうか。
で、黄瀬戸にアフリカの模様が入っていたら面白いうつわになるんじゃないかな、と思いついたのが始まりです。
色々試して・・・
-: 鉄絵という選択肢はすぐに出てきたのですか。
城: 鉄絵は鉄絵でしたが、最初は筆を使いました。
でも、筆で描くと、線が生きてしまうんです。
-: 線が生きるというと、通常歓迎すべきことに聞こえます。
城: 線が活き活きとし過ぎるというか、線が染まっている感じにならないんですよね。
織物って、動きは無いじゃないですか。
-: それでこの技法が出てきたわけですね。
城: 一番しっくりきます。にじみ方も丁度よくて。
釉薬も動かないものや、もっと流れるものを色々試して、これが一番、具合よかったんです。
白化粧に線を引くというのもやってみたんですけど、それもちょっと違った。
-: 線のひきかたも色々試されたのですか。
城: はい。釘の太さとか、線の引き方とか・・・。
ある程度かっちり作るのがいいな、と。
-: 音を聞いていると、ガリガリガリ、みたいな感じで、小刻みな紆余曲折を経て下に降りて行く感じがしました。
スーッとそのまま下がっていくような線だと、この染めたような感じにならないだろうなと思いました。
城: 細かい土を使うとスッと引けてしまうんです。
でも、使っている土には結構石が入っているので、そこで引っかかる。
その突っかかりが必要なんです。
-: 今でも、作りながら泥染めのイメージは持っているのでしょうか。
城: きっかけだし、影響も受けてはいますが、仕事をしながら目標にしているというわけではありません。 要素の一つです。
意外と万能
-: ご自身でも鉄絵のうつわを使っていますよね。
城: 模様も入っているし、ちょっとインパクトはあるんですが、意外と何を盛っても合うと思っています。
-: 東南アジアのエスニック料理などにも合いそうです。
城: 和食でも洋食でも、そんなに選びませんね。
-: ご家族の反応は?
城: 当たり前にあるので、別に何も。
いちいち意識していないと思います。
オーバル初登場
-: 二人展、楽しみにしています。
最近やっているというアルファベットも面白いと思うので、是非。
城: 色々作ってみますね。
オーバルも初めて出そうと思っているので、よろしくお願いします。
-: このオーバルは、使いやすそうでいいですね。
よろしくお願いします。
城進さんの仕事の様子を動画でご紹介しています。
是非ご覧ください。