Patterns of Slipware 文様の愉しみ
-スリップウエアの場合-
花田: スリップウエアには色々な魅力があると思いますが、文様もその一つです。
山田さんにとって、化粧土で模様をつけることの楽しみとは何でしょうか。(以下花田-)
山田: こちらの意志でコントロールしきれない化粧土を使って描くので、手先で「模様を描く」というより、体の「動き」に近いイメージです。
-: リズムやテンポを大事にする運動のようなものですね。
描いた後も化粧土は動きます。
化粧土の動きをコントロールするのもなかなか難しい。
山田: そうですね。
一方で、表面張力など、物理的な特性を使うことはできます。
ボアーズヘッド
-: 文様一つずつ、お話しを聞かせて下さい。
まず、ボアーズヘッド。
ポイントは「幅」でしょうか。
山田: 幅で随分印象変わってきます。 あと化粧土の濃度。
-: 目指していることはありますか。
山田: 幅だけでなく、全体的に「一定」を目指します。
僕は不器用で手先での小細工はできないので、手先は固定し、体全体で揺れて動きを作っていく感じです。
-: 山田さんは、誰かにスリップウエアを習ったわけではないですよね。
そういう感覚はやっている内に身につけていったのですか。
山田: 色々試す中で、自分に合っている方法を選んでいきました。
フェザーコーム
-: フェザーコームはボアーズヘッドにひと作業加わりますね。 いかがでしょうか。
山田: 間を考えます。 ベースに縞があるので、それに合うような間隔で。
-: できた縞を前提にフェザーコームを考えていく中で、間隔はどう決めていくのですか。
山田: 一概には言えないですが、丸みのあるかたちだと、少し詰まっているほうが良いのかな。
いやそうでもないな・・・。
文様だけでは考えられないし、いざ言葉で説明しようとすると無理がでるな・・・。
形や焼き方同様、文様はあくまで一つのパーツなので、そういった位置づけで進めています。
-: フェザーコームが入ると、イメージはガラッと変わりますね。
山田: はい、ボアーズヘッドの状態で、縞がそれほどよくないなと思っていても、フェザーコームを入れるとよくなることもあります。
ボアーズヘッドで終わらせようと思っていたのに、目指した通りにいかなくて「フェザーコーム入れとくか」みたいな(笑)。
逆に、ボアーズヘッドも上手くいって、フェザーコーム入れたらもっとよくなった!というのもあります。
山田: そうそう、この前、スリップ合宿したんですよ。
スリップウエアをやっている作家5人で集まって。
-: 面白そうですね!
山田: それぞれが自分の道具を持ってきて。
模様のつけ方もみんな違うんですが、その人の土と釉薬で、その人の窯で焼いたら、その人のものみたいに見えるんです。
結局その部分が一番大きくて・・・まあ、焼き物なので仕方のない部分です。
形も、模様も、焼きも良く仕上がることがスリップウエアとしては幸せなんでしょうけど、それぞれはパーツなんですよね。
文様で言えば「奇抜な模様で目を引くことはできても、それ以上でもそれ以下でもないな」というのが僕の感覚です。
他のつちものに比べたら特徴的な部分なので、そこで勝負できないといけないというのは大前提です。
プニュプニュ?
-: 山田さんが「プニュプニュ」と呼んでいるこの文様。独特ですね。
山田: 昔の人がやっていなかったことを試みているという意味では、自分としては納得しています。
-: 文様を描きながら、思いついたのですか。
山田: 表面張力の活用・・・だけにフィーチャーしていった感じですね。
三連のもの
-: さて、三連のものは、よくやるんですか。
山田: あまり、しないです。
今回は、松井さんが「やれ」って言うから。
-: 「やれ」とは言っていないですよー(笑)。
僕が個人的に好きなだけです。
山田: 確かに、三連のものはより瞬間的でライブ感があって面白いとは思います。
-: ボアーズヘッドプやプニュプニュはテンポや一定感を大事にされている気がするのですが、三連のほうは勢いや走りが魅力ですね。
山田: スピード感を大事にしています。
-: 輪になっているのはどうですか。
山田: あれは、ロクロの回転を使っています。
小鹿田なんかの飛びカンナが中心から広がって行く感じを、スリップでやってみました。
-: マーブルはほぼコントロール不可能の感じですね。
やっている内に少しは予測がつくようになりましたか。
山田: そうですね。
マグカップなんかは意図を持ってやっています。
色々な色をうまく重なるようにとか、でもグチャグチャになり過ぎないようにとか・・・、そういう感じですね。
-: 色々とお話し、有難うございました。
5月の二人展、楽しみにしています。
山田: よろしくお願いします。
山田洋次さんのスリップウエアの制作の様子
インタビューに登場した、ボアーズヘッド・フェザーコーム・プニュプニュなどの文様を描く様子を動画でご紹介しています。